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『天保六花撰〜河内山宗俊と森田屋清蔵』あらすじ

(てんぽうろっかせん〜こうちやまそうしゅんともりたやせいぞう)


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【解説】
 『天保六花撰』は講談中興の祖といわれる二代目松林伯圓(しょうりんはくえん:1834?〜1905)の作。世話物の連続講談であり、河内山宗俊、片岡直次郎、金子市之丞、森田屋清蔵、暗闇の丑松、三千歳、この六人の悪党が主人公になる。この『河内山宗俊と森田屋清蔵』では、そのうちの三人が登場する。
 森田屋清蔵は日本橋で海産物の問屋を営む。ここに、河内山宗俊というお数寄屋坊主と三千歳という花魁が現れる。森田屋は三千歳の馴染みの客である。河内山は森田屋に金を出させ三千歳の身を引き受けるよう要求する。実は、森田屋に身請けをさせ彼が飽きた頃に三千歳と河内山の弟分である片岡直次郎を添わせようという魂胆だった。しかし森田屋の方が一枚も二枚も上手だった…。

【あらすじ】
 江戸は日本橋室町に海産問屋があり、主人を森田屋清蔵という。そこに一人の女性を連れた河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)が現れる。11代将軍の家斉(いえなり)はたくさんいる側室の中でも、お美代の方を殊の外ご寵愛している。宗俊はその父親で千代田の城内でも威張り散らしており、方々で悪さをしても役人は手を出せない。江戸の人たちは宗俊の名前を聞くと震えあがっていたという。客間に通された宗俊の脇には、吉原の大口楼の三千蔵(みちとせ)という花魁がいる。森田屋は三千歳の馴染みの客である。宗俊が語るには、三千歳は森田屋に会いたくて吉原を逃げ出して来たという。実は三千歳には片岡直次郎という愛人がいる。片岡は宗俊の弟分である。森田屋に一旦三千歳の身を預けさせ、時が来たら片岡と一緒にさせようと考えている。宗俊は森田屋に身請けするように求める。
 しかし森田屋は両膝に手をついて黙っている。宗俊は森田屋、三千歳がこれほど思いを寄せているのに何もしないのかと迫る。森田屋は「お断りします。片岡直次郎というトンビが油揚げをさらおうというのでしょう」という。すべてお見通しだったのだ。これは敵わないと思った宗俊は豹変する。「本郷大根畑の御家人、片岡直次郎と三千歳は夫婦の契を結んだ仲である。しかし、大口楼に縛られている限りは所帯を持つことは出来ない。そこで粋な森田屋に三千歳を身請けしてもらい、半年でも一年でも我が物にしてもらい、飽きが来たところで片岡に添わせてもらいたい」と考えていたことを丁重に話す。そこで森田屋は三千歳の身請けの金として100両、片岡には半年の間のお小遣いを宗俊を介して与える、半年経ったら、自分が父親役となり片岡と三千歳とを一緒にさせる、ただしその半年の間は二人が会うのは我慢してもらう、こう言う。森田屋の才知にさすがの宗俊も舌を巻いた。「片岡直次郎のことは自分に任せてくれ」、宗俊は三千歳を連れて下谷・練塀小路への我が家へと帰る。片岡直次郎には森田屋から渡された25両を与える。
 翌日、森田屋清蔵は大口楼へ行き100両の金を払って身請けする。森田屋の妾になった今の朝10時頃目を覚ます。銭湯に行き、化粧をすると森田屋が妾宅にやってくる。一杯飲んですぐ帰っていく。こうして数日経った。一人でいるとき三千歳は、いつも片岡のことを想う。婆やに言い付けて、片岡に手紙を送る。夜、片岡は三千歳のいる妾宅へと向かい、2階に上がる。酒を飲んで二人枕を並べて寝る。翌朝早く、片岡は妾宅を抜け出す。こんなことが2、3回繰り返される。三千歳の笑い方が不自然になり、化粧が濃くなった。勘が鋭い森田屋は片岡と密会していることを早速に察知する。
 朝早い時間、森田屋は三千歳のいる妾宅に行き、これから仕事で房総の方に半月から一月出かけると言う。すぐに片岡に連絡すると、この日はいつもより早く妾宅にやってくる。しばらく森田屋は来ないということで二人は喜び、この日は酒を浴びるほど飲んで、戸締りするのも忘れて寝てしまう。夜が更けて、房総へいったはずの森田屋や帰ってきた。戸締りのしてない戸をガラッと開ける。婆やを起こし、下谷・練塀小路の河内山宗俊の元に行き、彼をここに呼んで来いという。森田屋は、三千歳と片岡の寝ている部屋へと入る。キセルをトントンと叩くと、片岡が目を覚ます。森田屋の姿を見て「しまった」と思う。三千歳も目を覚ます。片岡は「魔が差したんだ、許してくれ」と深々とお詫びする。そこへ宗俊が到着する。「兄貴、勘弁してくれ」、「よくも俺に恥をかかせたな、とっとと消えて失せろ」、片岡は妾宅をあわてて逃げ出していく。三千歳はメソメソ泣いている。河内山は怒って「お前には吉原でまた務めてもらう」こう言い、三千歳と二人、駕籠に乗って練塀小路の家へと帰っていく。
 翌日、河内山は吉原の大口楼に行き、三千歳を100両の金で再び身売りする。それから森田屋の店に行き、これで勘弁してくれと100両の金を差し出す。森田屋は出した金をまた元に戻すのは嫌なので、河内山にそのまま納めてもらいたいと言う。河内山はこれを断ろうとするが、ここで森田屋は自分はただの商売人ではない、海賊であると明かす。河内山は驚くが、なるほど只者ではないと思っていた。これから河内山と森田屋清蔵が義兄弟の契りを結び、二人して悪事を働くという話になる。




参考口演:宝井琴梅

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