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『雲霧五人男(雲霧仁左衛門)〜大宮宿 唐丸籠破り』あらすじ

(くもきりごにんおとこ・くもきりにざえもん〜おおみやじゅく とうまるかごやぶり)


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【解説】
 甲州文殊ヶ岳(七面山のこともある)を根城にする盗賊の頭領、雲霧仁左衛門と五人の手下、雲霧五人男(木鼠吉五郎、因果小僧六之助、洲走り熊五郎、山猫三次、おさらば伝次)が主人公になる連続物。仁左衛門は堅気になろうと手下どもに大金を分け与え、散り散りに別れる。遊興に金をすっかり使い込んでしまった洲走り熊五郎は、近江屋という質両替商で飯炊き奉公をするが、ここで按摩をしている因果小僧六之助と出会う。二人で密通をしていた店の女房と番頭から大金を奪うが、過ちから殺すはずでなかった2人を殺害してしまう。逃走する熊五郎と六之助。しばらくして熊五郎は、中山道の高松宿で料理屋の主人となる。

【あらすじ】
 享保九年九月のこと。所は中山道、深谷と本庄の間の高松の宿。盗賊の集団である雲霧五人男の一人、洲走りの熊五郎は古着屋に姿を変え、雨の中歩いている。相模屋という汚い飯屋に入ると、一人の爺ィと25〜26歳のいい女がいる。爺ィの話では自分の娘でお常というが連れ合いに死なれ、今は細々とこう飯屋を営んでいるという。熊五郎は十助と偽名を使い、足が痛いからとここで何泊もする。手の早い熊五郎。いつの間にかお常と良い仲になる。日が経つうちにすっかりその気になり、熊五郎は入り婿になって堅気になろうと思う。爺ィも承諾し2人は一緒になる。泥棒稼業で稼いだ金で料理人や女中を雇い、神仏に深く信心し、2年ほどだつと、旅籠半分料理屋半分の大きな店になる。
 享保12年10月のこと。相模屋を一人の御用聞きが現れ、越後国から唐丸籠が一丁来るという。昼過ぎ、役人2人手先3人を伴って唐丸籠が到着し、相模屋で休息する。熊五郎はどんな奴だと気になり見てみると驚いた。かつての盗賊仲間、山猫の三次である。まさかこんなところで出くわすとは思わなかった。人を殺めた罪で捕らえられ、取り調べの中で雲霧五人男の一人と判明して、江戸へ送られる途中であった。熊五郎には気づいていない。かつての仲間、生まれた時は別々でも死ぬ時は一緒に死のうと誓った仲である。助けてやりたいと思う熊五郎。今夜は大宮宿へ泊るという。
 熊五郎は百両の金を持ち店を出、夕暮れ大宮まで着いた。唐丸籠は原田屋という宿屋に入ったと聞く。公用があるのでお泊めできないというが、主人に馴染みだからといって無理矢理にこの原田屋に泊まる。手水にいくふりをして部屋を出、バタバタバタと大きな音を立てて、また部屋に戻る。これを何度も繰り返す。この物音に最初のうちは気にしていた役人だが、繰り返しているうちにさして気にならなくなる。
 真夜中、奥の部屋には唐丸籠が据えられ、その手前の部屋には不寝番がいる。寝ずに監視しているわけだが、長旅の疲れ、明日には江戸に着くという気の緩みがらウツラウツラとする。熊五郎は唐丸籠の中の三次に声を掛ける。熊五郎は竹製の落火(らっか)、今でいう時限爆弾のようなものを3箇所仕掛けておいた。これが次々に爆発する。熊五郎は、役人たちを斬り払い、三次を連れて宿を逃げ出す。原田屋は燃え盛り、火事だ火事だと大宮宿は大騒ぎである。
 山中に逃げ行った熊五郎と三次。女房を貰い料理屋の主人に落ち着いている熊五郎だが、人相書きが出回っておりいつまでも安穏としていられない、上州辺りに身を隠すつもりだと言う。山猫の三次は上方へと逃れると言う。お互い縁があったらまた会おう。こうして逃げ出だした2人だが、その後お縄に掛かり、鈴ヶ森の刑場の露と消えたのであった。




参考口演:六代目神田伯龍、八代目一龍斎貞山

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