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『雲霧五人男(雲霧仁左衛門)〜荊沢村』あらすじ

(くもきりごにんおとこ・くもきりにざえもん〜ばらざわむら)


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【解説】
 連続の読み物『雲霧五人男』の発端部に当たる。雲霧仁左衛門とその主だった手下5人の物語だが、この場面ではまだ彼らの素性は良く分からない。甲州荊沢(ばらざわ)村に市川文蔵という大金持ちがおり、妻は元花魁のお花である。ある日お花の母親が病気だとの手紙を受け取り、番頭と共に駕籠で遠く駿府まで旅立つ。途中、関所の手前で通行手形が無いことに気付く。そこで一行は裏街道を進むが乞食と出会い、その乞食に脅される…。

【あらすじ】
 名奉行と評判の高い大岡越前守が活躍していた享保年間、世を荒らしまわっていたのが雲霧仁左衛門である。甲州荊沢(ばらざわ)村に市川文蔵という豪農が住んでいた。農業のほかに質両替商を営むという大金持ちである。女房を早くに失った文蔵は、駿府の花魁であったお花を後添えにする。元は花魁だったということで最初のうちは奉公人たちは陰口を叩いたりしたが、お花は細かい心遣いをし、いつしか皆に慕われるようになる。ある時、文蔵宛てに駿府から急飛脚で手紙が届いた。お花の母親が病気で危険な状態であるという。すぐに番頭の宇兵衛を伴ってお花は駕籠で荊沢を出立し、駿府へと向かう。翌日の昼、万沢の関所の手前に差し掛かるが皆、通行手形を持っていない。あまりに慌てて忘れていたのだ。仕方なく一行は裏街道を進む。途中現れたのが5人ばかりの乞食である。40〜50文の金を渡すが、乞食のうちの一人が宇兵衛の顔を知っていた。もし裏街道を通っていたことが役人にバレると大変なことになりますぞと脅す。お花はこれを差し上げますから勘弁してくださいと、3枚の小判を差し出す。これに気を良くした乞食たちは散り散りバラバラに去っていく。宇兵衛はまずいことをしてくれたと思う。乞食が小判など持っている訳がない。これが役人に知られたら乞食どもは問い詰められ、自分らの関所破りも露見してしまうかも知れない。
 駿府に着いたが間もなくお花の母親は亡くなる。弔いが終わり一行は荊沢村へ戻り、宇兵衛は関所の裏街道での出来事を主人の文蔵に話す。悪いことにならなければいいがと文蔵は思うが、何も起こらない。
 それから2ヶ月ほど経ち、二十数名の手先を率き連れて荊沢村の名主宅を訪れたのが、江戸南町奉行である大岡越前守の公用人、石子伴作と中田伊左衛門の2名である。今でいう捜査令状のようなものを見せ、市川文蔵宅を取り調べるという。その夜は文蔵、奉公人らはみな名主の家に留め置き、明日隣村へ引き連れるという。夜が明けて、昼近くになっても名主宅に役人は来ない。一人が文蔵宅を訪れても誰もいない。不審に思い甲府勤番支配の巨勢能登守に訴え、文蔵宅を調べると、金蔵から15,000両ばかりが無くなっている。さては役人であるというのは真っ赤な嘘で、一味は盗賊であったか。
 この話を聞きつけた大岡越前守は、文蔵を江戸まで呼びつける。なぜ、偽の役人が来た時否認しなかったのかと問い詰める。文蔵は万沢の関所での一件を告白する。越前守は、薬師如来のお堂でお花の母親の病気の平癒を祈念するため裏街道を通ったのであろうと言い、関所破りの件は不問に付された。
 文蔵は石子、中田と名乗った偽役人の風体を描く。本物の石子伴作と中田伊左衛門は商人の格好になり、身延山への参詣の途中という姿で駕籠に乗り、万沢の関所の手前から裏街道に入る。すると関所役人らしき男がおり、2人になぜ本街道を通らないのかと責める。石子は手形をうっかり忘れたと言う。「関所破りとはふてえ野郎だ」、これは役人の使う言葉ではない。石子は役人に1両の金を渡すが、たったこれだけかと男は怒る。それなら100両を渡そう。それなら許してやる。男が手を出したところで、石子はその手をグィッとひねり、身体を大地に投げ飛ばす。石子、中田は素性を明かし、荊沢での窃盗の一件でここまで来たと語る。男は偽物の役人であると白状し、名はミミズクの権次であるという。雲霧仁左衛門の子分であるが、荊沢村での窃盗には加わっていないと言う。権次の話から雲霧の主だった手下は、木鼠吉五郎、洲走り熊五郎、おさらば伝次、山猫三次、因果小僧六之助であることが分かるが、一味の行方は杳として知れない。




参考口演:六代目神田伯龍、八代目一龍斎貞山

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