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『赤穂義士銘々伝〜源蔵婿入り・赤垣の南瓜娘』あらすじ

(あこうぎしめいめいでん〜げんぞうむこいり・あかがきのかぼちゃむすめ)



【解説】
 「赤垣(赤埴)源蔵」というと「徳利の別れ」の場面が有名だが、その源蔵が赤垣家に婿養子に行くまでの話。実際には源蔵が浅野家に仕える以前の素性については諸説あり分かってないことが多い。赤垣重代は赤穂藩の藩士で一人娘の「おとく」がいる。器量の良くないおとくは陰で「赤垣のカボチャ娘」と言われており、それを気にしているためか内にこもりがちである。そんなおとくは桜の花を見にいった帰り道、浪人者に絡まれているところを、若い侍に助けられる…。

【あらすじ】
 赤穂浪士四十七士のひとり赤垣源蔵は婿入りしてからの名で、元は塩山源蔵という。赤垣重代(じゅうだい)は播州赤穂5万3千石、浅野家の家臣で150石を頂いている。「おとく」という一人娘がおり、いつかは養子を迎えなければならない。しかし背が低く小太りで器量もいいとは言えない。周囲の者からは「赤垣のかぼちゃ娘」と呼ばれている。親は女一通りのことは教え武芸も習わせたが、なかなか婿の来手が見つからない。歳はすでに23歳。昔の23歳といえば、子供が2〜3人いてもおかしくない歳である。親の期待に応えられず、おとくは引きこもりがちである。
 三月になり、桜の花が見ごろの時季である。両親も花見にいくように勧め、おとくは顔を見られぬよう「かつぎ」という薄い絹を被り、下郎を一人連れて屋敷を出る。花を見終わって帰ろうとしていた時のこと。向こうの方から酒に酔った浪人者3人が歩いてくる。「向こうから可愛い女が来たぞ」と言っておとくの「かつぎ」をサッと払う。ふつうの娘なら「あれェ」と声をあげるところだが、おとくは武芸の心得がある。「無礼者!」と言って、パーンと扇子で手をはたく。「こいつめ」、浪人者の一人はおとくに襲い掛かってくる。おとくは手を逆手に取り、浪人者を投げる。
 浪人者のまた一人が刀を抜く。おとくの供をしていた下郎は逃げてしまった。周りの者たちも誰一人、おとくを助けようとしない。もはやこれまでと思ったおとく。この時に武者修行帰りの若侍が通りかかり、おとくと浪人者の間に入る。「おのれ、邪魔者」、浪人者はこの若侍に斬りかかる。すると若侍は手刀で打ち付け、浪人者は刀をポロリと落とす。「拙者が相手にいたすぞ」、若侍は浪人者を投げつける。「おのれ、覚えておれ」、3人の浪人者はスタスタスタと逃げる。「お女中、怪我はござらんか」、「はい、お名前を伺ってもよいでしょうか」、「拙者は播州・龍野脇坂淡路守の家来で塩山源蔵と申す者です。一緒にまいりましょう」。
 下郎の方は、屋敷に飛び込みおとくが浪人者に襲われていることを重代に話す。重代は馬に乗りすぐさまおとくの元に駆け付ける。そこで一人の若侍に連れられたおとくと鉢合わせする。おとくは「このお方に助けていただきました」という。「これで私のお役目は終わりました」と言って若侍は去っていく。「いやぁ、立派なお方だ」、重代は感心する。
 それからおとくは屋敷のなかでなんとなく沈んでいる。ひと月もの間、自分の部屋でジッとなにかを考えている。ときにはポロポロと涙を流し、食事も喉を通らない。重代も心配していると、妻はいう。おとくはこの前知り合った塩山源蔵様を婿に迎えたいと思っている、しかしそれが叶わず気鬱になっているのだ。
 なんとかしてあの塩山源蔵を婿にしたいと思った重代は、刀屋の与兵衛を呼ぶ。与兵衛は近隣の大名からも広く仕事を引き受けている。与兵衛は脇坂様のお屋敷にも出入りしており、塩山源蔵も知っているという。3年間修業の旅に出て、剣術の腕も相当に上がっている、両親を亡くして今は兄と2人のみ、家は兄が継ぐことになり、婿に来てもらいたいという要望があちこちから来ているという。重代は、「それなら赤穂に来てもらえないか」という。与兵衛は「龍野と赤穂ならすぐ近くなので良いでしょう」と答える。重代がその相手とは自分の娘だというと、与兵衛は「あのかぼちゃ娘!」と驚く。重代は話がうまくまとまれば50両、まとまらなくても10両という金を与兵衛に与えるという。それなら、なんとか話をつけましょう、与兵衛は喜ぶ。
 与兵衛は源蔵の兄である塩山伊左衛門の屋敷を訪れ、源蔵の婿入りの件について尋ねる。相手は赤穂の方、家は150石、歳は二十うん歳、背は低い。この春に源蔵と出会い、食事が喉を通らないほど恋をしていると語る。伊左衛門は源蔵を呼び出した。源蔵は異存はないという。実は源蔵もおとくと出会った時から、このような娘を妻にしたいと思っていたという。この先トントン拍子に話は進み、源蔵は赤垣家に婿養子に入り、浅野家に仕えるようになった。それから何年か経ち、赤垣源蔵は赤穂四十七士の中に加わり、主君の無念を晴らすことになるのである。




参考口演:神田桜子

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