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『赤穂義士伝〜吉良邸討ち入り』あらすじ

(あこうぎしでん〜きらていうちいり)



【解説】
 浅野内匠頭が無念の死を遂げてから1年10ヶ月。長い間の苦労が実っていよいよ赤穂四十七士は、亡き殿の仇、吉良上野介の屋敷へと討ち入る。2時間ほどにわたって奮戦が繰り広げられるが、47人は一人も命を落とすことなく、ついには上野介の首を討ち取り大望を果たす。赤穂義士伝の山場であるが、演じられる機会はそれほど多いとはいえない。

【あらすじ】
 元禄15年12月14日、1年10ヶ月の苦労が実って赤穂浪士47人は吉良邸に討ち入ることになる。前日までの雪は止み、月は皓々と辺りを照らしている。江戸は本所松坂町・吉良上野介の屋敷の前に集結した47人の赤穂浪士、表門には大石内蔵助(くらのすけ)を主将に23人、裏門には内蔵助の嫡男、大石主税(ちから)を主将に24人、総大将の内蔵助が山鹿流の陣太鼓を打ち鳴らす。これを合図に裏・表の浪士が屋敷のうちに乱入する。
 第一に飛び込んだのが片岡源五右衛門。田村の庭前で内匠頭と最期の別れをしたのはこの源五右衛門ただ一人であった。吉良の付け人である和久半太夫は酒宴で飲みすぎ、酔って広間でクッーと寝入っている。ダッダッダッダッ、俄かに物音がする。半太夫はガバッと跳ね起きる。酔い覚めの水を飲み刀を手に取り、「死人の山を築いてくれる」と叫ぶ。鳥居、小林、和久、清水の4人は卑怯と言われてもいいから一人で討とうとは思うな、三人で掛かれと内蔵助は浪士に言い付けてある。飛んできたのが浪士の中で一番の粗忽者と言われている竹林唯七である。唯七は捨て身の一突き、和久半太夫を討つ。
 これを聞いて悔しがったのが堀部安兵衛と赤垣源蔵の2人。我々も敵を探して天下に名を高めてやろう。あっちこっち探してやってきたのが台所である。さすがに吉良の屋敷で風呂ではないかと思うほどの大きさの釜である。釜の蓋が動いている。だれかあの中に隠れているのではないか。赤垣源蔵が竃(へっつい)に火をくべる。「アッチッチッ」、何者かが飛び出してくる。見たところ侍ではない。豆腐屋だという。「それでは斬らず(キラズ)にやるぞ」「マメ(豆)で帰れます」、これじゃァ落語のオチである。
 一番高齢であったのが、堀部弥兵衛金丸(かなまる)で年は76歳。堀部安兵衛の義父である。「老いぼれめ、命もらった」。吉良の付け人のひとりである新貝弥七で、チャリンチャリンとやりあうが、年老いた堀部弥兵衛はそのうち息があがってしまう。倒れたところで新貝弥七は馬乗りになる。弥兵衛の首を取ろうとするが、講談はよくできている、ここでなぜかちょうどよく現れた倅の堀部安兵衛。ものの見事に新貝弥七の片腕を斬り落とす。すると弥兵衛がなぜか怒る。「馬鹿者め、立つのが面倒だから寝たまま奴をやっつけようとしていたのだ」。
 浪士5人が車座になって真ん中の付け人一人の向かっている。この吉良の付け人は清水一学である。安兵衛が来ると浪士5人はパラパラと開く。安兵衛がお相手いたす。両者ジリジリとにじり寄る。チャリン、つばぜり合いの末に清水一学が倒れる。安兵衛は右の肩から斬りつける。
 吉良の付け人のなかでは一番の腕と言われているのが、小林平八郎。二刀流の使い手であった。この日は非番で長屋にいた。物音に気付き外に出ると、この姿を千馬三郎兵衛が見つける。ピッーと呼子の笛を鳴らす。周りを赤穂浪士が取り囲む。不破(ふわ)数右衛門が相手になる。平八郎は雪に足を取られツルッと滑る。そこ数右衛門が捨て身で払った刀が見事平八郎の胴に入った。「無念かな」、平八郎は雪のなか命を落とす。
 さて肝心の吉良上野介が見つからない。内蔵助は広場に浪士を集める。無念であるがこのまま一同切腹するか。吉田忠左衛門の提案で浪士は八方に散り、再び屋敷を隈なく探すことにする。竹林唯七と間十次郎は上野介の寝所を再度調べる。最初調べたときは布団にまだ温もりがあった。枕もとの床の間に一間もある大きな達磨の掛け軸がある。ムシャクシャしていた竹林唯七がこれを斬りつける。斬った跡を見ると掛け軸の後ろには人が出入り出来るような大きな穴がある。
 間十次郎が中を覗く。飛び出した一人を十次郎が斬る。また一人飛び出し今度は竹林唯七が斬る。なおも中に白くうごめく物がある。さてはと間十次郎が引き出すと、間違いなく吉良上野介である。呼子の笛をピッーと鳴らす。内蔵助をはじめ一同が集まる。両手を着いて御首(みしるし)を頂きたいという。「わしは上野介ではない」、震えながら言うが眉間には浅野内匠頭が付けた傷が残っている。「潔くご自害を」、九寸五分を上野介に握らせ腹切りの真似事をさせる。後ろに回った主税が上野介の首を刎ねる。
 本懐を遂げ、一同のものはうれし泣きし、勝ち鬨をあげる。浪士の者たちは引き揚げる。回向院から一ツ目通り、永代橋、築地、高輪・万松山泉岳寺へと向かい、内匠頭の墓前に上野介の首を供えるのであった。




参考口演:一龍斎貞水

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