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『奴の小万〜生い立ち』あらすじ

(やっこのこまん〜あらすじ)



【解説】
「奴の小万」ことお雪(この話中では「おはん」)は200年ほど前の大坂の女侠客で、元は長堀の大店の娘であった。江戸後期には人形浄瑠璃や歌舞伎の主役として大坂はもとより江戸まで知れわたる。松井今朝子が『奴の小万と呼ばれた女』という書を著している。講談では上方、東京両方で演じられ、女流の方が掛けることも多い。

【あらすじ】
 大坂の長堀の大きな小間物屋。「おせい」という女性が亭主亡き後、何人かの奉公人を抱え店を取り仕切っている。おせいには息子が2人、娘が1人いる。娘は15歳で名を「おはん」と言う。ある日、おはんは女中のお伝を連れ立って町の盛り場に遊びにいく。その帰りがけ、ひとりのならず者が現われて、おはんの簪(かんざし)を抜き取り人ごみに紛れこもうとする。これを見た女中のお伝はこの男の腕をグイッと捩じ上げ足を払い身体を押さえつけて簪を取り返す。「今日は見逃してやるから、どこへでも行っておしまい」こういうと男は逃げていく。
 お伝は夫が柔術の先生で、自分も習っていたという。私にも柔術を押しててほしい、おはんはしつこく言う。お伝も断り切れずに、密かに稽古着を買い、土蔵のなかで稽古をする。もとより武芸の筋が良かったと見えて、おはんの柔術の腕はみるみるうちに上達する。
 おはんが21歳の時の正月、おせい、おはん、お伝など店の者揃って、天満宮へお参りに行く。その帰りがけ、天神橋に差し掛かると、向こうの方から蜘蛛の伊三郎と鯰の長太というならず者の男が2人やってくる。蜘蛛の伊三郎はわざとおはんにぶつかろうとするが、おはんはさっと身体をかわす。「このアマ」、鯰の長太は殴りかかって来るが、お伝は男の襟髪を掴み、右へ左へ振り回し、川の中へと投げ込んでしまう。男2人は逃げ去ってしまった。
 驚いたおせい家に慌てて帰り、おはんとお伝を奥の座敷へ呼ぶ。どこであんな技を覚えたのか、おはんに尋ねるとお伝から習ったと言う。おせいはお伝に暇を出し、おはんには外出を禁止する。まるで病人のようにふさぎ込んでしまったおはん。
 おせいの許しがでて、おはんは女中のお清、丁稚の長松とともに夜桜見物にいく。3人茶屋で団子を注文して待っていると、向こうの方からならず者風の男たちがやってくる。その中の一人は先日、おはんにさんざんな目に遭わされた蜘蛛の伊三郎である。瞬く間に大勢の男たちが集まり、おはんを取り囲む。丁稚の長松はあわてて逃げ出して家へと向かう。おはん絶体絶命である。ここに現れたのが、マツコ・デラックスのような立派な体格の女である。「堅気の女子になにをする。この三好屋のお六が相手になりまっせ」。これを見て、あいつは化け物だと男どもは怯んでいると、今度は三好屋四郎右衛門という親分が現われる。四郎右衛門は20両の金を出すと、男どもは喜んで姿を消してしまう。
 お六に付き添われて、おはんは家に帰る。おはんは母親に「この人が助けてくれた」とお六を紹介する。
 翌日、おはんと母親は駕籠で三好屋の親分の元を訪れて昨日の礼をする。その翌日、今度はおはんが一人でやってきて、三好屋の親分にお身内に加えて欲しいと頼む。それには母親の同意がなければならない、おはんに良く意見をするようにと、三好屋の親分はお六に言い付ける。しかしお六はぜひ自分の妹分になれとけしかける。そのまた翌日もおはんは三好屋の親分を訪ねる。お六は「女は四谷怪談のお岩さんように執念が大事だ」と焚き付ける。その次の日もその次の日も。
 ある日、今度はおはんと母親と二人でやってくる。おはんはこのまま堅気では生きていけない、親分の身内に加えて下さいと、母親は言う。
 こうしておはんは三好屋の身内になる。名前を小万と改める。「奴の小万」という女侠客として名を馳せたという。




参考口演:神田こなぎ

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