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『やくざの恋』あらすじ

(やくざのこい)



【解説】
 長谷川伸原作。やくざ者の敬介には「必ず一緒になろう」と誓った女、お米がいる。お米は親の借金返済のため信州・湯田中で女郎になる。夢にまで見て忘れられない敬介は湯田中まで赴くが女郎屋にお米はいない。しつこく迫ってくる、とある若旦那を嫌がり、今では高馬の藤五郎という大親分の元に閉じ込められているというのだ…。五代目宝井馬琴が演じたほか、現在は宝井琴梅が時折掛けており、CDも発売されている。

【あらすじ】
 上州無宿の小夜霧(さよぎり)の敬介は、まだ30歳になったばかりの命知らずの旅人である。房州の宿に泊まっている時のこと、夜明け前、お米の夢を見て、ハッと目を覚ます。去年の冬、親の借金のため女郎になるが、年が明けたら必ず一緒になろうと誓った女だ。これほどのべつにお米の夢を見るというのは、まだ忘れられないということか。そうだ、会ってみようと思いたち、敬介は、お米のいる信州・湯田中の柏屋という女郎屋まで来た。店の者に聞くと、お米はここにはいないという。とある小旦那がお米の元に通い詰めたが、お米はしつこく迫ってくるこの小旦那が嫌で嫌でしょうがない、店を足抜けしてえらい騒ぎになったこともあった。今では代官所でも手が出せない、高馬の藤五郎という800人もの身内がいる大親分の元にお米は閉じ込められているという。お米をなんとしても助け出す。小布施にいる藤五郎にわたりを付け、明日、八百又で会おうということになった。
 翌日、敬介は奥の広間に通される。藤五郎は55〜56歳のでっぷり太った赤ら顔の貫禄のある男であった。藤五郎もお米には手を焼いているという。お米が言うには想っている男は一人もいないと藤五郎は語るが、敬介は実は自分ただ一人を想っているのだと言う。藤五郎は、命懸けでお米に惚れている小旦那のために、お米を閉じ込め説得しているのである。それより上の者がいるのか。それならば敬介とお米を会わせてやろう。お米が敬介のことを知らない、嫌だと言ったら、敬介の首を取るつもりだ。土蔵の中に声を掛けると、閉じ込められているお米が窓から顔を出す。まず小旦那が現れた。お米はそんな人は忘れたと言う。次に敬介が姿を現した。敬介が斬られそうになった。「敬介さん」、思わずお米は声を上げる。これは敬介の勝ちだ。お米を連れていきなと藤五郎は言う。
 お米は解き放たれ敬介と2人へ草津へと向かうと、3人の追手が現れる。高馬の藤五郎の所の若い者で、小旦那から10両の金を握らされ、敬介を斬り殺し、お米を連れて帰るよう頼まれていたのだ。敬介が1人を斬り、さらに1人に斬りかかろうとしたところで、もう1人の黒蔵という者がお米を追っかけて山の中へ入っていく。黒蔵はお米に追いつく。黒蔵は手籠めにしようとするが、そこには谷が迫っていた。
 日の暮れる少し前に、敬介は小布施に戻ってきた。血刀を片手に藤五郎を前にする。若い者5〜6人と敬介がチャリンチャリンとやり合い、傷を負い逃げる。「やくざの風上にも置けない奴め」。「それは何かの勘違いだ」。敬介の背後から、竹槍と脇差を持った数人の助っ人が迫る。「切っちゃいけない」、藤五郎は叫ぶが、敬介は刺され、前へと倒れる。
 半月ばかりたって、藤五郎の家では、敬介が手当てを受けている。藤五郎は敬介を傷つけたことを詫び、敬介は藤五郎を誤解していたことを詫びる。敬介はお米の安否について尋ねる。黒蔵を草津で見かけたという者がおり、お米も狼に食われたという話も聞かないので、どこかで達者でいるのではないかと藤五郎は答える。傷が治ったら、お米を探す旅に出る、女に操があるのなら、男にも操がなければなら無いでしょう、と敬介は言う。
 それから半月ほど経ち、敬介の傷はすっかり治り、お米を探しに旅に出る。お米は生きているのか、敬介と再会できたのか、それは聞いているお客様に任せることにする。




参考口演:五代目宝井馬琴

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