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『水戸黄門漫遊記〜荒浜藤蔵』あらすじ

(みとこうもんまんゆうき〜あらはまとうぞう)



【解説】
 助さん、格さんを率き連れてのお馴染みの水戸黄門漫遊記のひとつ。仙台の手前、岩沼宿まで来た水戸黄門一行。宿屋で隣の部屋には仙台でも一番という大金持ち、大島屋治兵衛と花嫁のお松が泊っていた。黄門様の部屋に泊まりたいと無理矢理頼む荒浜の藤蔵という乱暴者。藤蔵はお松に懸想をしていた…。主に上方で掛かる読み物である。

【あらすじ】
 助さん、格さんの2人を連れて、奥州漫遊の旅に出る水戸光圀。仙台より5里手前の岩沼という宿まできた。亀屋という大きな宿の2階で一泊することになった3人。隣の奥の部屋が一番の上間で、その次の部屋に案内される。風呂へ入り、夕食を済ますと、隣の部屋でなにか物音をする。女中に聞くと、仙台でも一番という大金持ちである大島屋さんで、この度亘理小堤(わたりこづつみ)という所で花嫁を貰い、その里帰りでここに泊まっているという。その花嫁は亘理小町と呼ばれ人形のように可愛いという。そんな器量がいいのなら見てみたい。光圀は隣の部屋を訪れ、自らを常陸国の百姓の光右衛門だと名乗る。床の間の前には、大島屋治兵衛と花嫁のお松が並んで座っている。確かに美しいお嫁さんだ。光圀は茶を飲み、長々と話し部屋を出る。
 真夜中、今でいう十二時頃、すっかり辺りは静まり返っている。亀屋の表戸をドンドン叩く音がする。荒浜の藤蔵という亘理小堤の人足頭で子分は20数人といる、土地の嫌われ者である。お松には前々から目を付けており、大島屋に話があるといって乗り込んで来たのであった。大島屋夫婦の泊まっている隣の部屋に入りたいので、そこに泊まっている者を追い出せという。亀屋の主人は、2階の光圀の元に行き、事情を話し、部屋を移ってくれるよう頼む。そんな乱暴者ならばと光圀は下の部屋へ移るという。すると騒ぎを聞きつけて大島屋が光圀に話しかける。藤蔵はこれまでも家内のお松にしつこく言い寄ってきたという。隣の部屋に入れろとは何か魂胆があるに違いない。光圀らが下の部屋に移るというのなら、自分たちも下の部屋に行くという。
 藤蔵は先ほどまで光圀がいた部屋へ入り込み、酒、肴を用意させる。隣の部屋にご挨拶をと入ってみるが大島屋夫婦はいない。主人に尋ねると常陸の国のご隠居といっしょに下の部屋に移ったという。今度は藤蔵はそのご隠居を上の階に上げろという。階下の空いた部屋に自分らは入ると言う。再度、大島屋は光圀に相談する。藤蔵には何をされるか分からないので仙台まで5里であるので戻ることにする。また光圀らも大島屋一行に同道することにする。提灯を手に出立した一行は仙台へと出立する。荒浜の藤蔵にはご隠居は上の部屋へ移ってもらったという。下の部屋に入った藤蔵。ガラッと戸を開けるが大島屋はいない。初めて亀屋の主人は、大島屋さんは常陸のご隠居と一緒に仙台に戻ったと説明する。
 大島屋夫婦は、光圀一行を伴って、仙台の1里手前の茶店まで来る。女性もいるので歩みは遅い。4人の子分を連れた藤蔵らが追いつき茶店の中に入ってくる。「岩沼の宿ではお世話になりましたな」、大島屋はブルブル震えている。「これこれ、お前かな、荒浜の藤蔵というのは」「先ほどから邪魔建てする常陸のご隠居とは貴様か」。藤蔵は光圀の横っ面を殴ろうとする。助さんがヒョイとこの手を掴み藤蔵を投げ飛ばす。さらに格之進が天秤棒を持って藤蔵の子分4人を叩き倒す。松の木に5人を括り付け、朝になると干からびるから頭から水を掛けてくれと、茶屋のおやじに言い残す。光圀は筆を取り出し、さらさらと立札に何やら書き留め、松の木に立てかけ、大島屋一行ともども茶屋を離れる。
 しばらくして、伊達家の家老、伊達阿波がこの茶店を通り掛かる。立札を見ると「亘理小堤のならず者五名しばりおくものなり。命はとうに及ばず。水隠梅里(すいいんばいり)」と書いてある。これは水戸光圀公が認めたものに違いない。茶屋の主人から、大島屋と一緒だったことを聞きつける。
 藤蔵とその子分だが、お取り調べの末、領内で1年間牢に入れられ、その後処払いとなる。このことが仙台青葉城主、伊達綱村に伝えられ、伊達阿波が、光圀を大島屋まで迎えに行く。




参考口演:旭堂南鱗

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