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『法律書生』あらすじ

(ほうりつしょせい)



【解説】
 明治時代の話、井上徳太郎という男の出世譚。父は宇都宮藩に仕えた元士族で政府から「奉還金」貰い、東京で商売を始め成功する。倅の徳太郎は法律家をめざし、勉学のため芸者遊びをやめ、仕事をしながら夜は法律学校へ通う。のちに大阪で巡査として勤務し、勤務態度が優秀だいうことで府知事の邸宅に招かれる。そこで出会ったのはかつて東京で将来を誓い合った芸者、小富であった…。神田紅純さんはこの読み物を5回ほどの連続物として「返咲浪花梅(かえりざきなにわのうめ)」の演題で掛けていた。

【あらすじ】
 明治の世になり、それまでの士族を自活させるため政府は「奉還金」というものを下げ渡す。宇都宮藩の重役であった井上徹もこの奉還金をたんまり貰い、何か商売を始めようと東京へと上京する。妻、息子の徳太郎、娘の静江と相談した結果、人形町の三光神道で団子屋を始めるが、そもそも家族にまともに団子の製法を知る者はなく、2ヶ月で閉店してしまう。今度は売れ残っても腐らない物をと、宇都宮から久兵衛という者を呼び寄せて呉服屋を始める。番頭の久兵衛の腕もあって今度は店は大層繁盛する。
 徳太郎は法律家を目指して勉強する毎日。ある日、久兵衛が食事をする間に、代わりに店番を務める。そこへ水天宮にお詣りした帰りと思われる、芸者風の女性2人が店を訪れる。徳太郎はこのうちの「姉さん」と呼ばれる女性に心を奪われる。
 ああいう女性相手に、一晩くらいは芸者遊びをしたいものだ。徳太郎は店の金50円を持ち出し、蛎殻町の割烹店を訪れる。先般出会ったのは富田屋の小富(ことみ)という芸者で、それからは店の金に手を付けて、毎日のように小富相手に放蕩をする。徳太郎と小富、いつかは一緒になろうと夫婦約束をするが、果たして小富は本当に自分に惚れているのか、小富の母親はいつも金の無心をするが、自分はただの金づるなのか。疑問に思った徳太郎は今日限り、芸者遊びをやめ仕事をしようと決心する。
 久松町の小学校で助教員の職を見つけ、仕事をしながら夜は法律学校へ通う。学校を卒業してからは、警視庁の巡査になり交番で勤めるが、仕事の成績が優秀で大阪府庁から声が掛かり、今度は大阪の天王寺で勤務する。困った人に助けの手を差し伸べる模範巡査として評判になり、大阪府知事の邸宅へ招待される。徳太郎は食事と酒がふるまわれ、府知事とはすっかり意気投合する。そこへお酌をしに来た富子という女性、彼女こそかつて夫婦約束までした小富であった。金に汚い彼女の母親は5000円で娘を売り、流れ流れついて今はここ府知事の邸で女中をしているという。徳太郎は府知事にこれまでの事を正直に打ち明ける。不思議な縁に驚く3人。
 府知事の支援もあって徳太郎はますます勉学に励み、判事の試験に合格する。府知事が父親代わりになって、富子とは夫婦になる。上級裁判所の判事として東京に戻り、府知事の力添えと富子の内助の功もあってついには司法大臣にまで上り詰めたという。




参考口演:田辺鶴遊

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