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『は組小町』あらすじ

(はぐみこまち)



【解説】
 過去には服部伸が得意にし、今でも冬になると良く掛かる読み物である。日本橋の火消し「は組」の頭、源右衛門にはお初という十九歳になる娘がおり「は組小町」と呼ばれているほどの美人である。源次は次の「は組」の頭になる男でお初の許嫁であった。一方「い組」の松兵衛には三五郎という息子がいるが、お初に横恋慕している。暮の二十五日、火消しに出た源次は三五郎の策略で命を落としてしまう。お初は源次の仇討ちを決意して…。

【あらすじ】
 日本橋一帯の火消しを担う「一番組」のなかには「い組」「よ組」「は組」「に組」「万組」と5つの組がある。「は組」の頭(かしら)、源右衛門は人形町に住む。娘のお初は今年十九歳。大層な美人で「は組小町」と呼ばれている。また源次は次の「は組」の頭になる男でお初の許嫁(いいなずけ)である。
 一方「い組」の頭の松兵衛は、一番組を統率する頭取(とうどり)である。彼には三五郎という息子がおり、跡を継がせようと思っていた。ある日、お初は父親から、三五郎が自分を嫁に迎えたがっていると聞かされる。父親にとっては娘を将来一番組の頭取になる三五郎に嫁がせる方が出世である。しかし源次という許嫁のいるお初はこの話を断る。
 叔父の力添えにより、お初と源次は夫婦になり玄冶店(げんやだな)に所帯を持つ。
 その年の暮の二十五日、火消しに出た源次は黒焦げの姿で自宅へ運ばれ、医者も助からないという。源次はまもなく息を引き取る。燃えている家の屋根に上る纏(まとい)持ちは、先に上がると、後に上がった纏持ちが降りないうちは、そこを退くことが出来ないという決まりがある。今回の火事で一番に屋根に上がった源次だが、後から上がった三五郎が降りなかったので退くことが出来ず、ついには火の中へのみ込まれてしまったのだ。お初の件で源次を恨みに思っていた三五郎がわざと降りなかったのだろうと父親は言う。お初は夫の亡骸の前で泣き崩れ、三五郎への復讐を誓う。
 翌年正月七草、浅草で火事が発生する。「は組」の新三が纏を持って出ようとするが、お初は父親から頼まれた手紙をどうしてもすぐに芝まで届けて欲しいという。新三は手紙を届けに芝へ向かう。火事現場では、呉服問屋の屋根に「い組」の纏持ちである三五郎が先に上がる。続いて「は組」の纏持ちが上がる。実は新三のふりをしたお初で、装束で顔を隠している。源次の仇を討つためであった。火の手は強まるが「は組」の纏持ちが降りないので、三五郎も退く事が出来ない。降りてくれるよう懇願する三五郎。その前でお初は隠していた顔を見せ正体を現す。驚いた三五郎は火のなかへと落ち、まもなく家は崩れる。三五郎は死んだ。一方、お初も大火傷を負い、息も絶え絶えの状態で玄冶店の自宅へと運ばれる。仇を討てた事を知ったお初は、静かに源次の待つあの世へと旅立つのであった。




参考口演:一龍斎貞寿

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