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『清水次郎長伝〜法印大五郎(秋葉の火祭り)』あらすじ

(しみずのじろちょうでん〜ほういんだいごろう・あきばのひまつり)



【解説】
 法印とはここでは「山伏」のこと。清水次郎長はバクチ場で邪魔ばかりをする法印大五郎という男を子分たちから預かり、話を聞く。大五郎は元は甲州の吃安(どもやす)という親分の身内であったが、その吃安が子分である小田井小五郎から女房を寝取り、こんな親分の元にはいられないと吃安の元を離れた。この話を聞いた次郎長は驚く。小田井小次郎とその女房こそ次郎長の義兄を殺害した下手人で、行方をずっと探していた相手であった…。
 これから「秋葉の火祭り」で次郎長、法印大五郎とともに遺児である甥の増川仙右衛門が小田井小五郎を仇討ちする場面に続く。この「法印大五郎との出会い」の部分が、「秋葉の火祭り」の前編として読まれる場合もある。

【あらすじ】
 駿河国・清水湊で男を売っていたのが清水次郎長。ある日のこと、江尻に用足しに出かけた帰り、自分の子分大勢がヤクザ体の大きな男を担いで歩いているのを見かける。聞くとこの男がバクチ場でなにかと邪魔だてをするので捕らえて、川にでも放り込もうとしているという。
 次郎長はこの坊主頭の大男を引き取り、一緒に清水湊でも一番と言われる松本屋という茶屋旅籠屋の奥座敷にはいる。男は武州・榎戸の生まれで、元は神や仏に仕える法印(ほういん)で平沢寛山(かんざん)と名乗ったが、今はバクチ打ちをやっていると語る。人呼んで法印の大五郎、歳は41。甲州・竹居の吃安(どもやす)の子分であった。吃安といえば子分が二千人もいるというたいそうな親分である。そばには津向(つむぎ)という場所があり、文吉という親分がいる。この親分にも二千人もの子分がおり、しょっちゅう吃安の手下と喧嘩をしている。吃安の元には大岩、小岩などの立派な子分がたくさんいる。「吃安というのは偉い方なんだな」と次郎長が言うと、法印大五郎は「とんでもない、あんな奴は畜生ですわ」と言葉を返す。怒った次郎長は大五郎の小手を掴みあげ、横っ面をポカポカと殴る。「なにをなさるんです」。「お前はとんでもない奴だ」。次郎長は世話になった元の親分を悪くいう大五郎が許せなかったのだ。着物を脱いで、ここを出てけと言う。
 大五郎は話す。南部様のご家来で剣術の指南をし150石を頂いていた小田井(おだい)小五郎という男がいたが、この小五郎が甲州に来て吃安の身内になり、神沢(かんざわ)というところでバクチ打ちになった。この小五郎があるとき大五郎の元に来て、自分の女房が間男をしている、この男が今夜忍んでくるから一緒に来てくれと言う。一緒に小五郎の家に行くとなるほど色男がいる。小五郎は戸を蹴飛ばして中に入る。男は逃げもせず、部屋であぐらをかいている。この男が竹居の吃安であった。「親分の楽しみを邪魔しやがってとんでもないやつだ」と言って大五郎の頭をポカポカと叩く。吃安が言う。この女は元は東海道・興津の魚屋のカミさんであったが小五郎という間男を作り、亭主を殺した、その女と小五郎は甲州へ逃げ自分が子分にして匿った、しかし小五郎は茶屋遊びをして他の女と夫婦約束をする、女房の元へ帰らない、そこで自分が面倒をみてやった、この女は妾にするからお前は他の女と夫婦になれ。こう言われて小五郎は「ようござんす、差し上げます」と言葉を返す。吃安は小五郎に25両の金を与える。この様子を見ていた法印大五郎、「こんな親分のために命を捨てられるか」と甲州を飛び出した、とこう次郎長に語る。子分の女房と言えば娘のようなものだ、その娘に手を出すとは犬畜生みたいな奴だ、畜生だと言ったのはこういう訳だと話す。
 この話を聞いた次郎長は、手を大五郎の肩にかける。次郎長は座り直して、「その女は左の頬に小さなホクロがあり、おみつという名ではなかったか」と尋ねる。驚いた大五郎は「その通りです、どうしてご存じです」と尋ね返す。次郎長はおみつを行方をずっと探していたという。次郎長にはお松という実姉がおり、興津の大問屋の佐太郎のところへ嫁に行った。そのお松が死んだので、江尻の女郎屋で働いていたおみつという女を身請けして新しい女房にした。そのおみつが間男をして、その間男とともに亭主の佐太郎を殺して逃げてしまった。お松が産んだのが仙右衛門という倅で17歳だった。なんとか仇を取りたいとおみつとその色男を探していたが、大五郎の話を聞いてその行方が分かった。次郎長は甥の仙右衛門に仇討ちをさせて欲しいという。これも何かの縁だ。法印大五郎は次郎長の子分になる。秋葉三尺坊の火祭りにはきっと小五郎が姿を現すであろう。これから法印大五郎が手引きをし、増川仙右衛門が次郎長とともに仇を討つという話になる。




参考口演:六代目小金井芦州

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