『講談るうむ』トップページへ戻る講談あらすじメニューページへ メールはこちら |


『関口武勇伝〜殿様の月下氷人』あらすじ

(せきぐちぶゆうでん〜とのさまのげっかひょうじん)



【解説】
 「月下氷人」とは、男女の縁を取り持つ仲人のことである。  関口頼母(たのも)は、奥州二本松藩の殿様、丹羽左京太夫の家来で、関口流柔術の達人である。妻に先立たれ、弥太郎という呆けた倅とともに暮らしている。ある日、殿様が馬を飛ばすと六兵衛という百姓にぶつかる。暴れてどうしようとない馬を六兵衛の娘、タネが押さえつける。詫びを兼ねて殿様ら一行は六兵衛の家で一休みする。家の床の間には五郎正宗の素晴らしい銘刀があり、殿様はこれを所望する。殿様が代わりに六兵衛に与えたのは…。

【あらすじ】
 奥州・二本松11万石の殿様、丹羽左京太夫の家来で関口頼母(たのも)という者がいた。関口流の柔術の達人である。妻と倅の弥太郎と3人暮らしであったが、間もなく妻に先立たれる。弥太郎は元気な子に育つが心持があやふやであり、遊びもせずにいつも天井を見つめながらボッーとしている。
 丹羽左京太夫が馬で雀ヶ原まで遠乗りすることになる。頼母が馬の準備をするはずであったが、待ちきれない殿様は内緒で勝手に馬を引き出し、一人遠乗りへと出かけてしまう。頼母ら家来はあわてて殿様の後を追う。最初のうちはおとなしくしていた馬だったが、だんだんと本性を現し勢いをつけていく。殿様はもはや馬を制御できない。
 向こうの方から土手に登ってきた百姓のオヤジに馬は「ドン」とぶつかる。オヤジは跳ね飛ばされ、馬はそのまま駆け去ってしまう。その様子を見ていたのがオヤジの娘で、大柄の身体をノッシノッシと揺らして歩いてくる。「よくも俺の父様を突き飛ばしたな」。おのれ許さぬ。馬めがけて駆けだすと間もなく追いつき、殿様の足首を掴んで馬から引きずり下ろす。「父様の仇だ」と言って殿様を激しく殴りつける。馬に乗った殿様のお供の者たちがやっと追いついた。家来たちは刀を抜いて娘を斬りつけようとするが、娘はやはり足首を持って彼らを次々と馬から引きずり落とし、一撃を加える。ここでやっと追いついた関口頼母。百姓娘の襟首を掴んで向こうの方へと投げ飛ばしてしまう。
 殿様に対して不埒千万な娘である、手討ちにしようか。しかし蹴り倒された父親を思ってのことである、彼女の親孝行に免じで許されることになる。さて、百姓のオヤジだが目を回しただけで怪我もしていない。頼母が喝を入れると息を吹き返した。百姓は六兵衛といい、娘はタネという。
 殿様とその一行は、六兵衛の家で一休みすることになる。六兵衛に案内され殿様が奥の部屋に入ると、床の間には白木の箱があり前には線香が供えてある。六兵衛の家に先祖代々伝わる物だと言う。六兵衛の許しをもらって封印を切り白木の箱を開けると、五郎正宗の太刀が入っていた。あまりにすばらしい銘刀で、殿様は是非これが欲しい、六兵衛には望みのものはなんでも与えると言う。それならばと六兵衛は、娘のタネは村一番の力持ちで働き者だが、顔が自分にそっくりで嫁の貰い手がいない、この娘のタネを殿様の側女にして欲しいという。殿様は慌てる。こんな強い娘を傍に置いたなら今後も酷い目に遭わされるであろう。頼母は妻に先立たれたままである、この娘は頼母の後妻にしたらどうか。殿様の仰せだから、頼母は断る訳にはいかない。タネを新しい妻として迎える。さてそのタネだが気立てが良く、武士の妻としての作法もよく覚え、この上ない良い女房である。また頼母の倅、弥太郎に対しても実の母親のごとくかわいがる。やがて弥太郎は元服するが、相変わらずボッーとしたままである。この倅をなんとかしようと、塩竈明神へ願掛けにいくのだが、その話はまたいつの日か。




参考口演:田辺一乃

講談るうむ(http://koudanfan.web.fc2.com/index.html
inserted by FC2 system