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『賤機帯』あらすじ

(しずはたおび)



【解説】
 伊藤万治という男は大蔵省の身分の低い役人で女に惚れやすい性格である。ある時愛知に里帰りするが、その帰りに静岡で賤機(しずはた)という遊女と恋仲になる。賤機の身請けには莫大は金が必要であったが金を借り、2人は夫婦同然の暮らしをする。しかし借金返済の催促を執拗に受け、さらに弥右衛門、政次郎という男が横恋慕する。ハッピー・エンドになるが男にとって都合の良いような結末である。

【あらすじ】
 愛知県に住む伊藤万治という男は、明治になり、妻のお峰、妹のお民と共に東京へ出る。四谷の西方寺という寺の法蓮という僧侶の元に寄宿しながら、大蔵省の低い身分の役人として勤める。明治12年、暑中の休みで法蓮と連れ立って愛知に里帰りをする。法蓮と共に行ったのは、万治に女遊びをされては困るという妻の策略であった。
 里帰りをし、法蓮とともに名古屋の街を見物し、東京へ戻る途中に静岡へ立ち寄った。ここで万治は二丁町の千葉楼という遊郭に勤める賤機(しずはた)という遊女と恋仲になる。賤機は22〜23歳の島田髷をしたいい女で、元は武家の娘であった。賤機はすっかり万治に夢中になり、身請けしてくれないと死んでしまうというが、それには150両という金が要る。法蓮が1人先に東京に戻るが、もちろん金がそんな大金が出来る訳がない。静岡の万治には「カネデキヌ」と電報を送った。
 万治と賤機はお千代婆ァから100両という金を借り、魚屋に居候して二人、夫婦同然の暮らしをする。やがてお千代からは借金を返せという催促をしつこく受ける。
 お千代には飯島という親類がおり、その飯島の家に弥右衛門という者が寄宿している。弥右衛門は、賤機と万治が共に暮らしていることを知っていたのだが、それでも賤機に惚れてしまう。お千代は賤機に弥右衛門と付き合って欲しいと言い、賤機には300両の金を渡す。しばらくの間、賤機は弥右衛門の相手になる。賤機はすべては金が目当てだ、必ず帰るので我慢して欲しいと万治に話す。
 賤機が飯島の家で弥右衛門の相手をしていると、この家で法律を学ぶ書生の山田政次郎という男が賤機を連れ出す。この政次郎もまた賤機にぞっこんであった。政次郎は賤機に、せめて一夜だけでも共にすごして欲しいと迫るが、いやがる賤機は逃げ出してしまう。政次郎は賤機を必死に探すが、夜更けになって堀端で首を吊った女性の遺体を見つける。賤機は自害してしまったと思い込む政次郎。弥右衛門に伝え、警察と共に確認するが、首を吊っていたのは賤機とは似ても似つかぬ女性であった。それでは賤機はどこへ行ってしまったのか。
 法蓮、万治の妻のお峰、妹のお民がそろって東京から静岡へとやってくる。この場に賤機が現われ、お峰とすっかり打ち解ける。2人は東京で共に万治に尽くそうということになる。またお民の姿を見た弥右衛門は一目惚れし、この2人もまためでたく夫婦になる。東京へ戻った万治だが、知人・友人の尽力で免職にはならず、長期の休職として大蔵省に復帰することができた。万治、お峰、そしてお賤と名を変えた賤機は3人仲良く暮らす。
 明治16年、妻のお峰は亡くなる。万治は大蔵省を辞職し、賤機と共に名古屋・長者町に移って呉服屋を開く。お賤の着けていた帯は、大層評判になり「賤機帯」と呼ばれたと言う。




参考口演:田辺鶴遊

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