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『真田十勇士〜天人お国』あらすじ

(さなだじゅうゆうし〜てんにんおくに)



【解説】
 猿飛佐助は信州・上田城の真田幸村から全国を巡り、武勇に優れた者を集めるよう言いつかる。そしてやって来たのが備前・岡山。宿に泊まると世にも珍しい女妖術師による余興が始まる。いくつか術を見せたあとで、客はグーグー寝入ってしまう。手下と共にこの女妖術師は客の懐を物色する。この術使いは泥棒であったのだ…。

【あらすじ】
 忍術の名人である猿飛佐助は、信州上田の城主・真田昌幸の嫡男である真田幸村の家来である。幼少の頃から戸沢白雲斎に忍術を学び、16歳の時に幸村に見いだされ仕えるようになった。この時分の世の中は、武田家が滅亡し、天正10年には織田信長が本能寺で自刃し、その後を継いだ秀吉が天下を掌握しようという勢いであった。
 ある日、幸村は佐助を呼ぶ。諸国を巡って世の中の情勢を探り、またこれはと思う者がいたら自分の元に連れてまいれと言い付ける。上田の城下を出た佐助は、遠州・浜松で徳川家の様子を探り、鈴鹿峠を越えて近州では佐々木六角の家臣で槍術の名手、由井玉之助と出会い義兄弟の契りを結ぶ。この頃には朝鮮征伐のさなか秀吉が亡くなり、近々世は天下を二分する大戦が起こるであろうと幸村は予想していた。そこで佐助に書状を送り、九州の動向を探るように命じる。
 佐助は由井玉之助とともに、京・伏見から大坂へ、そして備前・岡山に到着する。ここで女妖術師の世にも珍しい余興が見られるという宿に泊まる。宿の主人は佐野屋八兵衛という。風呂に入り、食事が終わり2階の大広間に案内される。すでに宿に泊まっている者たちが大勢集まっている。女妖術師が現れ、座布団の上に座る。絶世の美女で大きな拍手が起こる。妖術師には男の介添え役が2人いる。この女の目の光り具合はふつうでない、これは魔性の女だと佐助には分かる。
 「わらわこそは、天人お国という妖術使いである。様々な術をお見せします」。まずは姿を隠す術である。天人お国が後ろの壁に身を付ける。すると身体がどんどんと壁のなかに吸い込まれていき、ついには姿が完全に消える。どこからかお国の声がして、すると壁の中から3匹のネズミが現れ、部屋の駆け回り、また壁のなかに消える。佐助は2人の介添え役がいないことに気付いた。これは伊賀流の忍術だ。石川五右衛門の身内に違いない。客がワイワイ騒いでいるうちに、壁の中から天人お国が現れる。ワッ―と拍手が沸き上がる。「これはほんの腕試しです」。
 「次の術にまいります」。すると客席の者たちは全員グーグー寝入ってしまう。ただ一人、佐助だけは起きているが、目をつむって眠っているふりをする。薄目を開けると、天人お国と2人の介添え役が、お客の懐がら胴巻きを物色している。「泥棒め!」佐助は大きな声を上げる。「見つかったか、逃げろ」、天人お国ら3人は一陣の風と共に消える。やはり奴らは伊賀流の忍術を使う泥棒であった。
 宿を飛び出た猿飛佐助は、備前の祐天山へと瞬間移動する。佐助の心眼によれば、ここがやつらの隠れ家に違いない。まもなく天人お国の一味が帰ってきた。佐助は木の上からヒラリと飛び降り、天人お国の首を押さえる。天人お国は消える。佐助は松の木に向かって石を投げる。上から天人お国が落っこちてきて倒れる。天人お国は捕らえられた。天人お国は「あなた様はどなたですか」と問うと、「我こそは真田幸村の家臣、猿飛佐助であるぞ」と答える。「有名な猿飛佐助様でございますか」、天人お国はうなだれる。佐助は一刀の元、貴様を成敗してくれると言う。天人お国は「我が師匠の言い付けを破ったのが身の誤りでした、覚悟を決めました」と言う。佐助は振り下ろそうとした大刀を止める。「ただ今の覚悟を忘れるのではないぞ。今日から悪事をやめ、正しい道に進むように」と天人お国を諭す。
 佐助が天人お国に忍術の師匠の名前を聞くと、芦名下野守に仕え今は浪人している霧隠才蔵(きりがくれさいぞう)であると答える。なにあの高名な霧隠才蔵であるか。勇士豪傑を探している佐助はぜひ会ってみたいと思う。天人お国に尋ねると、師匠の霧隠才蔵の隠れ家に案内してくれた。猿飛佐助は霧隠才蔵と出会い、互いの共鳴し合い義兄弟の盃を交わす。こうしてのちには霧隠才蔵もまた真田十勇士の一人となるのであった。




参考口演:田辺凌天

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