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『出世の高松〈水戸黄門記〉』あらすじ

(しゅっせのたかまつ〈みとこうもんき〉)


【解説】
 理想的名君として名高い水戸黄門こと徳川光圀。『水戸黄門記』はその黄門様と周辺の人物の虚実交えたエピソード集である。諸国を巡り悪を成敗するというお馴染みのパターンの『水戸黄門漫遊記』とは別物になる。
 この読物「出世の高松」は光圀の兄、頼重(よりしげ)の出生にまつわる話である。光圀とは直接関係ないが、兄の頼重の関係はその後の光圀の人生に重要な影響を与える。

【あらすじ】
 徳川家康の十一男の鶴千代、後の徳川頼房(よりふさ)が京にいた時分のこと。屋敷奉公をしていた「おしま」という女中に鶴千代のお手が付き懐妊する。江戸へ戻ることになっていた鶴千代は、おしまから子が出来た旨を告げられる。公には出来ない鶴千代は、産まれた子供が「もし男子なら訴え出よ」「もし女子なら十分な手当てをつかわす」こう書付けをしたため、さらに証拠の品として備前友成の短刀と香木「蘭奢待(らんじゃたい)」を残し、京を去る。これを受け取ったおしまは両親のいる実家へ戻る。しかし両親とも流行り病に罹り間もなく亡くなってしまった。叔父の宗右衛門とその女房が2人の菩提を弔い、身重のおしまの世話をする。おしまは鶴千代から受け取った品々を風呂敷に包み、叔父夫婦には「決して見ないで下さい」と言って、家の天井裏に吊るす。間もなくして元気な男の子が産まれるが、その際おしまは命を落としてしまった。
 宗右衛門夫婦はこの子を寅松と名付け、我が子のように大切に育てる。月日は流れ寅松13歳の時、雨降りが続き仕事が出来ず、夫婦は寅松に食べさせる物がない。どうにもならなくなった宗右衛門はおしまが残した風呂敷包みを思い出し、屋根裏からこれを下ろして中を見る。書付と短刀と良い香りのする木片があるが、宗右衛門にはこれらに何の価値があるのか分からない。香木の香を嗅ぎ付け道具屋の七六という者がやってきてこれらを調べ、寅松の父親が今は水戸中納言となられた頼房だと判明する。
 宗右衛門夫婦、寅松、七六の4人は江戸へと赴く。水戸様ともなれば普通はお会いできる方では無いが、七六が一策を講じる。水戸家へ出入りをしている鑑定家の治太夫に友成の短刀を見せ、これを買ってくれる先を探して欲しいと頼む。少しでも高く売りたい治太夫が刀を頼房公に見せると、これに見覚えのある頼房は刀の出所を聞きただす。こうして寅松は頼房公のご落胤だと判明し、3ヶ月後には親子の対面が叶う。
 一方で、頼房には千代松という男子がいる。寅松の方が年上なのだが、今まで千代松がお世継ぎとして育てられてきた事から、寅松改め頼重(よりしげ)は常陸・下館5万石の藩主、さらに3年後には讃岐・高松12万石の藩主になる。




参考口演:神田織音

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