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『寛永宮本武蔵伝〜玄達と宮内』あらすじ

(かんえいみやもとむさしでん〜げんたつとくない)



【解説】
 舅(しゅうと)の石川巌流の仇である佐々木岸柳を討つため、肥後の熊本へ向かい西へ西へと旅する宮本武蔵。大坂には毛利玄達という手裏剣の名手と、大蔵院宮内という弓の達人がいると知る。この2人と立ち合うことになる。

【あらすじ】
 宮本武蔵は江戸・目黒の行人坂、美作国・津山の城主、森大内記(だいないき)公の元で剣術指南役を勤めていたが、舅(しゅうと)の石川軍刀斎巌流(ぐんとうさいがんりゅう)の仇討で、佐々木岸柳を倒すため、肥後の熊本へ向かう。
 途中、箱根の山中では関口弥太郎と出会い、「天狗昇飛び斬りの術」を習い、三州・岡崎で竹ノ内加賀之介と武術の奥義を交換し合い、名古屋では尾張大納言公の剣術指南役、山本源東次と試合をする。
 大坂に到着した宮本武蔵。生田というところには毛利玄達という手裏剣の名手が、長町には大蔵院宮内(だいぞういんくない)という弓の達人がいる。玄達は子供のころ、材木が足に倒れ、片足が不自由になっていた。そこで座って出来る武芸ということで手裏剣を習うようになる。腕はメキメキ上達し、今では十間先まで正確に当てることが出来る。稽古用の手裏剣には白い粉が付いており、それで相手に当たったかどうか分かる。この玄達と武蔵が試合をする。床几に腰かけた玄達は、武蔵めがけて次々と手裏剣を投げる。武蔵は右の刀、左の刀でこれを払い落とす。20本の手裏剣を投げ、確かめてみると武蔵の着物に5ヶ所の白い粉が付いている。払い落としたのは15本である。これでは真剣であれば、武蔵は間違いなく大怪我を負っていたであろう。武蔵は玄達に「試合帳を見せて欲しい」と請う。ここには、今までに玄達が武芸者と対戦した記録が書かれている。見ると、吉岡兼房は2本、柳生十兵衛は1本、佐々木岸柳は当たり無しと記されている。武蔵は落胆した。佐々木岸柳の方が腕前は上である。これでは彼と対決しようにも前途は危うい。玄達は、あなたは若いので少し稽古を積めばすぐに上達すると言う。武蔵は玄達の道場に泊まり、毎日稽古を受け、1日に2度玄達の投げる手裏剣に立ち合う。こうして1ヶ月も経つと、武蔵はすべての手裏剣を打ち落とすことが出来るようになった。武蔵は玄達に深くお礼をして去る。
 武蔵の次の相手は、長町に道場を構える大蔵院宮内である。武蔵は長町の瓢箪屋(ひょうたんや)という旅籠に泊まる。宿の主人に尋ねると、宮内は他流試合をしたいと言えば誰でも受ける、ただし賭け勝負でないとしない、3本の矢を射って1本でも当たったら負け、全部打ち落とせば勝ちである。宮内と勝負して勝った者は誰一人としていない。試合をするのに1両を取り、勝てば5両の金を貰えるが、負ければ1両は取られてしまうと語る。武蔵は、宿の主人に大蔵院宮内の元に連れて行ってもらいたいと言う。案内してくれればそれで1分、もし自分が勝てば、5両の金を丸々主人に与えるという。これを聞いて宿の主人は大喜びである。武蔵を長町二丁目の大蔵院宮内の道場に案内する。宮内は元は八百屋であった。弓を趣味としていたがその腕をあげ、今では日本中に名を馳せる名人である。親類に欲の深い者がおり、彼のためと言って道場を建て、玄関に座って賭け勝負で金儲けをしている。武蔵はこの者に「小笠原左近将監の家来、宮本武蔵である」と名を告げようとするが、それでは金欲しさに来たと思われてしまう。とっさに「宮田武助である」と告げ、1両の金を渡した。
 道場に入ると、大蔵院宮内が出てきた。背が高く痩せぎすの立派な男である。宮内はお望みの弓で勝負をするので武蔵に選んでもらいたいと言う。武蔵は一番大きな弓を指さす。これは稽古用の弓であるものの、それでも当てれば大怪我をするが、武蔵はそれで構わないという。宮内が弓を引く。ピューと飛ぶが、3本の矢とも武蔵は見事に払い落とす。宮内は参りましたと言い、「あなたは宮本武蔵様ではありませんか」と尋ねる。
 気まずく思った武蔵は、道場を逃げ出す。様子を見ていた宿の主人が追いかける。武蔵は橋の上から欄干を越え、川に浮かんでいた船いけす、料理屋の船の上に飛びおりる。座敷に入りひと息ついていると、船が岸に着けたところで、瓢箪屋の主人が入り込んでくる。主人は勝ったのならば金を受け取ったらどうですと尋ねるが、武蔵は決まりが悪いと言う。自分は賭け勝負は嫌だ、これが露見すれば金目当てだと思われてしまうと語る。宿の主人は出かけ、しばらくしてまた船に戻ってくる。大蔵院宮内の元へ行って、5両の金をもらって来たという。あれほど決まりが悪いと言ったのにと思う武蔵。仕方なしにその金は宿の主人に与えることにする。やがて船には大蔵院宮内もやって来た。3人は十年来の友人のように楽しく語らうのであった。




参考口演:神田紅純

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