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『高野山物語〜刈萱』あらすじ

(こうやさんものがたり〜かるかや)



【解説】
 父の苅萱道心(かるかやどうしん)と母の千里(ちさと)、その子石童丸をめぐる親子の悲劇の物語。今も高野山中にある苅萱堂に伝わり、説経節、浄瑠璃、歌舞伎などの作品として演じられる。
 道心と石筑前国の武将、加藤繁氏(しげうじ)は、妻がありながら千里という美しい姫と恋に落ち、石童丸という子をもうける。嫉妬した妻は千里を殺そうとするが、これに巻き込まれて2人が命を落とす。世の無常を感じた繁氏は出家して高野山に登り、苅萱道心と号する。恋しい父親を捜して息子である石童丸は、母とともに旅に出る。父は高野山にいると知ったが、高野山は女人禁制である。母を麓の宿において石童丸が一人で山に登る…。

【解説】
 今から850年前の平安時代の話。加藤繁氏(しげうじ)は筑前博多の守護職で、桂子(かつらこ)という奥方がいる。ある日、領内見回りの際の途中で突然激しい雨が降ってくる。一軒のあばら家に入ると、そこには千里(ちさと)という美しい姫君と、姫のかつての父親の忠臣で朽木祐保(くちきすけやす)という者がいた。姫君の美しさに心を奪われた繁氏は、度々この家を訪れ、千里とはいつしか割りない仲になる。千里は繁氏の住む刈萱(かるかや)の邸宅に迎えられ、やがて懐妊する。
 これに奥方が激しく嫉妬し、暗殺をするよう早足(はやたり)に命じる。しかし早足は千里を前に刀を抜かず、この邸を立ち去って無事に子を産んでくれるよう進言する。すると自分の首を奥方の前に差し出して貰いたいと、祐保は自ら切腹し早足がこれを介錯する。また千里の腰元の呉羽が自分を姫君の身代わりにしてくださいと言い、自らの喉に刀を差し息絶える。
 自らの罪深さを悟った繁氏は筑前を去り紀州・高野山へと出家する。また千里は伯耆国・大山寺(だいせんじ)で無事元気な男の子を出産する。この子は石童丸と名付けられた。寺の住職から教育を受けながら、石童丸は大変に利発な子として育つ。
 14歳の時、石童丸は父親に会いに行きたいと言う。風の便りに繁氏が出家していたことを知っていた千里と石童丸の母子は高野山を目指す。目前まで来たところで、女人禁制との理由で高野山の麓の旅籠で母親・千里は1人待つことになる。長い旅路の間、千里は病に罹り寝込んでいる。
 石童丸は幾度も高野山に通ううちに奥の院でついに今は僧侶で刈萱(かるかや)道心となっている繁氏と出会う。しかし顔を知らない石童丸には彼が父親だとは分からない。一方、繁氏は石童丸の話からこれこそ我が子と知るのであった。だが繁氏は出家した身であるからと自分が父親であるとは明かさない。繁氏は「お前さんの父親は2月前に死んだ」と偽りを言って無縁仏の墓を参拝させ、石童丸に食事をさせてから母親の元へ帰す。山を降り旅籠へ戻ると母親の千里はたった今、病のため亡くなったところであった。母親の手をしっかり握りながら涙する石童丸。
 これから石童丸は刈萱道心の弟子となり、師匠が自分の父親であるとも知らないまま仏道修行に励んで、後には立派な僧侶になったという。高野山・蓮華谷にはこの親子の徳を偲んでいまも刈萱堂と呼ばれる庵(いおり)が結ばれている。




参考口演:一龍斎貞弥

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