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『小間物屋彦兵衛』あらすじ

(こまものやひこべえ)



【解説】
 『大岡政談』のうちのひとつで『小間物屋政談』という演題が使われることもある。『権左と助十』の題で歌舞伎や映画にもなっている。
 彦兵衛という評判の良い小間物屋の男がいる。ある日、彦兵衛は隠居殺しの嫌疑を掛けられ鈴ヶ森で死罪になる。彦兵衛の倅の彦三郎は父親の無実を信じて大坂から江戸へ出て来る。そこで権左と助十という2人の駕籠舁きが、隠居殺しについて真犯人について語っているのを聴きつけるのであった…。

【あらすじ】
 江戸・馬喰町二丁目に米屋(よねや)一郎衛門という旅籠屋があった。そのご隠居は同町内でお手伝いさんと共に気楽に過ごしている。そこへ小間物屋の行商人、彦兵衛が訪ねて来た。彦兵衛の自宅は大坂・堂島にあり、5両、10両と金が溜まると女房、子供に送金しているという、正直で評判で良い人物である。大変良い品物が見つかり是非買い求めたいので50両という金を貸して欲しいと隠居にいう。ご隠居は今100両という金を持っているが、これは寺へ納めなければならない金で今日中に取りにくると言う。その代わりにこれで金を拵えてくれと金・銀の小道具・骨董を貸し、彦兵衛は出て行った。
 ちょうどこの日、本家の米屋には講中の客がたくさん訪れ、人手が足りないという。そこでご隠居のお手伝いさんが手助けに駆り出され、その晩ご隠居は家に一人きりで寝所に入る。翌朝になってお手伝いさんが戻ってくると、さあ大変。ご隠居様が殺され、100両という金が無くなっている。彦兵衛はご隠居が100両という金を持っていることを知っていた。疑いがかかった彦兵衛は南町奉行で取り調べられ、厳しい拷問の末についには白状、打首のうえ獄門となる。
 この一件は大坂の彦兵衛の妻子の元にも伝わる。16歳になる息子の彦三郎は父がそんな事をするはずは無いと江戸へと旅立つ。鈴ヶ森の刑場でいずれが父親の遺骨であろうとさまよう彦三郎。すると男2人の声がする。彦三郎は石塔の陰に隠れると、その2人は駕籠舁きで、馬喰町の隠居殺しの一件の真犯人は同じ長屋の勘太郎ではないかと話している。彦三郎は2人の後をそっと付いて行って自宅の場所を確かめる。
 翌朝、駕籠舁きの一人、権左(ごんざ)の家を訪れ、自分は隠居殺しの件で死罪になった彦兵衛の倅の彦左衛門だと告げる。権左は昨年、霜月十七日の晩、長屋の天水桶でジャバジャバ手を洗う勘太郎の姿を目撃し、翌朝その天水桶を見てみると血で真っ赤になっていたという。その後、勘太郎はバクチに勝ったといって金遣いが荒くなった。ここまで聞くと、勘太郎が真の下手人に違いない。
 彦三郎らは、南町奉行に訴える。越前守が改めて調べると、勘太郎が真の下手人で間違いない。勘太郎は捕らえられて自白し、隠居殺しの一件はこれで済んだが、収まらないのが権左と助十。彦兵衛を誤って死罪にしてしまったがこれは取り返しがつかないと越前守を咎める。そこへ越前守が連れて来たのが死罪になったはずの彦兵衛である。彦兵衛と彦三郎、涙の対面をする。人相見が得意であった越前守は一目見て、彦兵衛が悪人の顔でないことが分かったので、お仕置きにしないでおいたのだ。彦三郎の『孝』、権左・助十の『義』、そして越前守の『名』三拍子そろったお裁きだと讃えられたという。




参考口演:一龍斎貞水

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