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『小幡小平次』あらすじ

(こはだこへいじ)


【解説】
 小幡小平次は、怪綺談の中に登場する想像上の歌舞伎役者。幽霊の役を得意としたが、殺されてのち幽霊になって祟ったとされる。殺された小幡小平次が幽霊になる話は、歌舞伎、映画、落語、講談などで様々に脚色されている。
 市川団十郎は舞台の上で生島半六という者に斬り殺される。半六にはおちかという女房がいた。おちかは太九郎(たくろう)という鳴り物師と小幡小平次という役者、両方の男と睦まじい仲になるが、金周りの良い小平次と夫婦になる。小平次は江戸の芝居小屋から干され、旅に出ることになる。そんな小平次を殺すよう、おちかは太九郎をそそのかす…。

【あらすじ】
 宝永元年2月のこと。市川団十郎は江戸・市村座の舞台の上で生島半六という者に斬り殺される。半六は下回りの役者であり、討ち首になって処刑される。半六には「おちか」という妻と六歳になる倅、半之助がいたが、夫が刑死になってからは極貧の暮らしである。この家を訪れる者もほとんどいないが、太九郎(たくろう)という鳴り物師と小幡小平次という役者だけがよく来る。おちかは男好きのするいい女であり、2人とも彼女のことを狙っていたのだ。そのうちにおちかは太九郎と小平次、両方に通じるようになる。太九郎がこのことに気が付き、おちかに「小平次と出来ているだろう」と詰め寄る。おちかは生活が苦しいから仕方がなかったと、これを認める。「本当に好きなのは太九郎さんなの」こう言いながら、表向きは実入りのいい小平次と夫婦になる。
 さて、団十郎の倅が二代目になっていた。この二代目が、小平次に、父親の仇の元女房と一緒になったことを責め、同じ舞台には立てないと言う。天下の団十郎をしくじったらこの世界にはいられない。小平次は他の芝居にも出られなくなってしまった。小平次は売れない役者の連中と一座を組み、旅の芝居に出掛ける。旅先からおちかには仕送りをしていたが、小平次がいないのをいいことに、おちかは太九郎を家に引きずり込んで、夫婦同様の暮らしをしている。
 しばらくして、太九郎の元に旅先の小平次から手紙がくる。鳴り物師が足りないので助っ人に来て欲しいとのことで、太九郎はおちかに相談をする。おちかは旅に出るよう勧め、行ったついでに小平次を殺してしまうようそそのかした。太九郎は奥州・郡山までいき、小平次の芝居を手伝う。小屋は連日大入り満員である。
 秋になり穫り入れの季節なので、今は客は来ない。太九郎は小平次を釣りに誘い、2人釣竿を持って安積沼へ出かけ船に乗る。夕方になった頃、太九郎は船から身を乗り出した小平次を沼へ突き落とし、さらに櫂で叩きつける。小平次は沼の底へ沈んだ。「これでおちかと一緒になれる」と喜び、太九郎は沼から姿を消した。
 それから十日経った夕方、太九郎はおちかの家を訪れる。おちかは昨夜遅く、びっしょり濡れた小平次が帰って来たと言う。そんな馬鹿なと思う太九郎。おちかが見てみるとさっきまで寝ていた小平次がいない。震え上がる太九郎とおちか。それから毎夜、小平次の亡霊が2人を苦しめたという。




参考口演:神田松鯉

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