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『赤穂義士銘々伝〜勝田新左衛門』あらすじ

(かつたしんざえもん)



【解説】
 『赤穂義士銘々伝』のうちの一話であるが、他の銘々伝とはやや趣が異なる。義士のひとり勝田新左衛門が活躍するところはあまりなく、その知らせを聞く舅の大竹重兵衛の方が主人公のようである。
 浅野内匠頭の家来、勝田新左衛門の元に大竹重兵衛の娘、おみつが嫁ぐ。新之助という子にも恵まれるが、それから6年、浅野内匠頭は殿中で吉良上野介を斬りつける。それから吉良に探りを入れるべく新左衛門は妻子の元を離れ、翌年12月14日、見事吉良を討ち取り本懐を遂げる。大竹重兵衛は風呂屋でこの知らせを聞くのであった…。

【あらすじ】
 牛込に住んでいた御家人の大竹重兵衛にはおみつという十八歳になる一人娘がおり、婿探しの最中である。弥生のある日、重兵衛とおみつは向島の墨堤へ桜を見物にいく。そこへ一人の酔いどれ武士が通りかかる。重兵衛の刀とこの武士の刀とが、カチッと鞘が当たる。2人は真剣勝負となるが、ここで重兵衛を助けたのは浅野内匠頭の家来で物頭役を務める勝田新左衛門という侍であった。これが縁でおみつは勝田の元へと嫁いだ。まこと夫婦仲も良く、元気な男の子も生まれ、新之助と名付ける。
 それから6年経ち、元禄14年3月14日、浅野内匠頭は殿中・松の廊下で積もる遺恨から吉良上野介を斬りつける。内匠頭は即日切腹、赤穂の家は断絶。勝田新左衛門は、重兵衛の元に妻・子を預け、秘密のうちに八百屋に成りすまして、吉良仇討の機会を伺う。もちろん妻子らに会うことは許されない。
 討入り前日の元禄15年12月13日、本所へ用足しに行った重兵衛は両国橋でボロボロな身なりの新左衛門と出会う。翌日、新左衛門は大層立派な侍姿で重兵衛の元を訪れ、妻・おみつや倅・新之助と再会し、伊達家に仕官が叶いそうな旨を告げる。新左衛門は「大切なもの」だとして紫の包みを渡し、明日また来ると言う。
 翌朝、重兵衛は風呂屋へ行き、熱い湯によい気持ちで浸かっている。あまりに熱すぎて町内の他の者たちは入れない。無理して入って泣き出す始末。そこへ本所・松坂町の吉良邸に赤穂浪士が討入り、めでたく上野介の首を取って本懐を遂げ、泉岳寺へと引き揚げたとの知らせが入る。瓦版を買い求め、義士の名前を読み上げると、その中に勝田新左衛門の名前がある。
 牛込に戻ると、おみつはまだ新左衛門が来ていないと言う。来ていないのも道理。昨日来た際に渡された包みの中を見ると、離縁状、倅の頼み状、それに金子50両が入っている「離縁など受ける覚えはありません」。おみつは緑の黒髪を根元から切って、生涯勝田の妻でいるという。
 重兵衛は孫の新之助を負ぶって、高輪と・泉岳寺へと訪れる。新左衛門と涙ながらに対面し、討ち入りの意志を察せなかったことを詫びる。また、おみつを妻のままにして欲しいと頼むと、「未来までも夫婦なり」と新左衛門はこれを受け入れる。新之助は重兵衛に教えられたとおり「父さま、お望みが足りてお嬉しゅうございましょう」と言う。名残尽きないなか、重兵衛には新之助の身の上を頼み、新之助には立派な武士になるよう言いつけ新左衛門は去るのであった。




参考口演:一龍斎貞山

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