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『赤穂義士銘々伝〜岡野金右衛門 恋の絵図面取』あらすじ

(あこうぎしめいめいでん〜おかのきんえもん こいのえずめんとり)



【解説】
 岡野包秀(おかのかねひで)(1680〜1703)は赤穂穂浪士四十七士の一人で通称は金右衛門。美男子であり、吉良邸絵図面をめぐるお艶との恋愛の逸話で有名である。
 吉良邸の様子を探るため、本所相生町で酒屋をしている吉田忠左衛門の元、手代として働く金右衛門。毎日この酒屋に通う18歳のかわいらしい娘、お艶が金右衛門に恋をする。お艶の父親が大工の棟梁で吉良邸の普請の仕事を請け負っていた。なんとか屋敷の絵図面を手に入れたいと思う金右衛門。お艶の恋心を利用し入手に成功するが、一方で自責の念に駆られるのであった。

【あらすじ】
 放蕩三昧だと思われていた大石内蔵助(くらのすけ)だが、実は吉良上野介の屋敷に討ち入りをして主君浅野内匠頭(たくみのかみ)の仇をとる心づもりである。その決意を赤穂浪士に告げると、大石より先に江戸へ乗り込んだ浪士の面々は、思い思いに姿を変え吉良邸の様子を伺っている。そのなかの一人吉田忠左衛門は、吉良邸の裏門の筋向こうにあたる本所相生町に小春屋清兵衛という名で酒屋を出す。番頭が神崎与五郎、手代が岡野金右衛門、飯炊きが矢田五郎右衛門、さらに矢頭右衛門七という具合である。
 毎日この酒屋にかわいらしい娘が徳利で酒を買いにきて、金右衛門の姿を見てポッーと顔を赤らめる。この娘は本所横網町大工の棟梁平兵衛の娘で、お艶といい今年18歳になる。父親の平兵衛はつい最近まで吉良邸の普請の仕事を請け負っており、屋敷の絵図面を持っているに違いない。お艶の恋心を利用して何とかしてこの絵図面を手に入れられないか。矢田と矢頭とで策をめぐらし、酒屋の2階に金右衛門とお艶2人きりにする。金右衛門はお艶を口説き、お艶も自分の恋心を打ち明ける。当初は仕掛けたものだったが、何度か落ち合っているうちに、金右衛門の想いもいつしか誠の恋心へと発展する。
 こうして一ヶ月ほどが経った。この酒屋は番頭に譲り主人は下谷坂本町に隠居することになった、主人は隠居所に吉良様の屋敷にあるような茶室を欲しがっている、金右衛門はお艶にこう言う。するとお艶は吉良の屋敷は自分の父親が建て直したもので絵図面に描いて残してあると答える。金右衛門がその図面を見せて貰いたいというとお艶はそれを聞き入れる。主君の仇を取るためとは言いながら、愛しいお艶をだましたことが金右衛門には心苦しい。
 家に戻ったお艶は父親の平兵衛に、吉良邸の絵図面を貸して欲しいと頼むが、父親は大工の決まりで決して他人には見せてはならないという血判があるからと断る。また、ましてや吉良様の命を赤穂の浪士が狙っており、もしこの絵図面が浪士の者たちに見られたら大変なことになると言う。
 翌日、お艶は金右衛門にこのことを告げる。がっかりした金右衛門はそれからお艶にまともに話しかけようとしない。金右衛門の態度が急に冷たくなったのは絵図面が手に入らなかったからだ。そう思ったお艶は父親の留守に抽斗(ひきだし)から絵図面をこっそり取り出して、これを金右衛門の元に持っていく。これに喜んだのが吉田忠左衛門で、絵図面をそっくり描き写す。絵図面はお艶に返されて、元の通り自宅の抽斗に戻しておいたので父親に知られることもなかった。この知らせは山科の大石内蔵助にも届き「絵図面があれば大願成就間違いなし」と、大石も江戸へ下ることになる。
 元禄15年12月14日が討ち入りの日と決まるが、その前日の13日は朝から大雪が降っている。金右衛門は合羽を着て本所横網町の平兵衛宅を訪ねる。平兵衛は湯屋へ行っており留守で、金右衛門は自分は大坂の商人の倅で帰らなければならないからと偽って、お艶に別れを告げる。
 真夜中、平兵衛の家の門を叩く音が聞こえる。訪ねてきたのは神崎与五郎で、金右衛門が実は赤穂浪士の一人であったことを伝える。平兵衛はならば大工の法に背いてでも吉良邸の絵図面を見せるべきだったと言うが、そこでお艶は実は無断で金右衛門の元に持参して見せに行ったと打ち明ける。「娘、でかした。それでこそ武士の妻だ」と誉める平兵衛。
 本所松坂町の吉良邸から赤穂義士の面々が本懐を遂げ晴れやかに引き揚げる。お艶と平兵衛は岡野金右衛門と対面する。金右衛門は夫婦の証の守り袋と、形見の品と呼子の笛をお艶に与えるのであった。




参考口演:一龍斎貞花

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