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『赤穂義士伝 南部坂雪の別れ』あらすじ

(あこうぎしでん なんぶざかゆきのわかれ)



【解説】
 討入りの直前の、大石内蔵助と浅野内匠頭の奥方・瑤泉院の別れの場面を描き、女流の方々が演じることも多い。
 浅野内匠頭亡き後、奥方であった瑤泉院は赤坂・南部坂に退いて夫の菩提を弔っている。元禄15年12月14日の雪降る日、討ち入りを目前にして大石内蔵助と息子の主税が瑤泉院を訪れる。夫の仇をいつ討ってくれるかと心待ちにしている瑤泉院。しかし万が一にも仇討の件が漏れてはならない。内蔵助は仇討の意思など全く無いと、心にもない偽りを言う。内蔵助は心底情けない男だと嘆く瑤泉院は部屋を出る。内蔵助は瑤泉院に仕える戸田局に袱紗包みを託し、主税と共に雪を踏みしめながら南部坂の屋敷を去って行く。

【あらすじ】
 元禄15年12月14日、この日の夜半には主君浅野内匠頭(たくみのかみ)の仇を討つべく吉良邸への討ち入りが決まっている。その雪の降る日、大石内蔵助(くらのすけ)は倅の主税(ちから)とともに、赤坂・南部坂の浅野内匠頭の奥方であった瑤泉院(ようぜんいん)の元を訪ねる。黒髪をぷっつり切った瑤泉院は吉良上野介(こうずけのすけ)に対する内蔵助らの仇討をいつかいつかと待ち兼ねている。出迎えたのは戸田局。女ながらに武芸に通じた者である。瑤泉院の前で内蔵助は今宵の討ち入りを伝えるつもりで訪ねてきたのだが、居並んだ女中の中に一人見知らな不審な者がいる。これでは敵方に万万が一にも漏れてはならない今夜の大事を打ち明ける訳にいかない。内蔵助は仇討の意思など全く無く、これからも山科で遊び呆けて暮らすと、心にもない偽りを言う。内蔵助の本心を伺えないまま、彼を心底情けない男だと嘆く瑤泉院は部屋を出ていってしまった。「それは真の心ではありますまい」と尋ねる戸田局だが、やはり内蔵助は本心を明かさない。折があったら瑤泉院に渡して欲しいと袱紗(ふくさ)の包みを託して、内蔵助と主税は雪を踏みしめながら去って行く。戸田局は紅梅という部屋住みの娘に袱紗包みを戸棚にしまっておくよう言い付ける。
 床に就くも、忠義の鑑と言われた内蔵助の情けなさを嘆き眠れない戸田局。そこへ部屋に忍び込んできたのが、先ほどの紅梅という娘。戸棚から袱紗包みを盗み出そうとするが、武芸に通じている戸田局はあっと言う間にこの紅梅をねじ伏せてしまう。「お許しください」。紅梅は上杉の間者であった。紅梅から奪い戻した袱紗包みから書付けが床へとポロっと落ちる。これを手に取って見てみれば、討ち入りの日は12月14日、そして四十余名の赤穂浪士の名前が書かれている。戸田局は慌てて瑤泉院を起こし、この連判状を見せる。内蔵助と浪士たちの義心は本物であった。ワッと泣き伏せる瑤泉院。東の空が明るくなる頃、寺坂吉右衛門が瑤泉院の元を訪れて討ち入りの模様を告げ、見事、吉良の首を討ち取った事を伝える。忠義の義士の働きに瑤泉院は涙するのであった。




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