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『間違いの婚礼(寧子の眼力)〈太閤記より〉』あらすじ

(まちがいのこんれい・ねねのがんりき〈たいこうきより〉)


【解説】
 何百とある『太閤記』の話のうちで、東京でもよく掛かる読物。女流が演じる場合も多い。宝井派では「寧子(ねね)の眼力」の演題が使われる。一般に「ねね」として知られる秀吉の正室、北政所はもちろん実在の人物でる。
 信長に仕える藤井又右衛門という足軽小頭がいる。彼には「ねね」という美しい娘がおり、前田利春の四男、犬千代という若君が嫁に迎えたいと思っている。身分といい容貌といい申し分のない犬千代であったが、「ねね」が選んだのは木下藤吉郎という猿のような顔をした足軽であった…。

【あらすじ】
 その後豊臣秀吉となる木下藤吉郎が織田信長配下の足軽だった頃の話。信長に仕える足軽小頭に藤井又右衛門という者がおり、彼には今年18歳になる「ねね」という美しい娘がいる。一方、尾州荒子の城主で6万石を取る前田利春の四男、犬千代は身長が6尺もある美男子で、ねねを気に入り嫁に迎えたいと言う。
 2人の縁談が藤井又右衛門に持ちかけられる。最初のうちは身分が違うからと断っていた又右衛門だが、何度も何度も乞われるうちすっかりその気になる。又右衛門の女房がねねにこの話を伝えるが、ねねは2人の身分の違いを理由に「釣り合わぬは不縁の元」「犬様は嫌でございます」といって拒絶する。
 これに困ったのが又右衛門。犬千代へ何と言って断ろうか。そこで組下の藤吉郎を犬千代の元に送って縁談が流れたことを伝えさせる。犬千代を前に藤吉郎は、実はねねには別に二世を誓った者がいると話す。犬千代はその男の名前を尋ねる。答えに窮した藤吉郎は「それは自分だ」とバレバレの嘘を言ってしまう。このような猿そっくりの男にねねが懸想をするものか。怒りながらも思わず吹き出してしまいそうになる犬千代。ならば自分が2人の媒酌人になるのですぐに式を挙げろと犬千代は言う。
 破談には成功したがとんでもないことになってしまった。困った藤吉郎は又右衛門に伝える。又右衛門の女房がねねに話すと、意外にもねねは話を受け入れると言う。ねねが語るには、犬千代が嫌なのではなく、犬千代の身分が嫌なのだ。藤吉郎のような男と共に苦労をしたいと言う。実はねねにはもっと深い思いがあった。以前ねねは信長から口説かれたことがあった。ねねが犬千代に嫁げば信長は犬千代を憎むだろう。他の男と結婚すれば信長はまたその者を憎むだろう。そこで思いもよらず、身分が低く顔も猿そっくりなこの男と縁付けば信長も相手にしないだろう、そう考えたのだ。
 その後、藤吉郎は関白秀吉になり、ねねは北政所(きたのまんどころ)となって内助の功を発揮する。犬千代は前田大納言利家となって秀吉の良き補佐役となる。秀吉とねねの馴れ初めの一席。




参考口演:一龍斎貞弥

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