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『安政三組盃〜羽子板娘』あらすじ

(あんせいみつぐみさかずき〜はごいたむすめ)


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【解説】
 『安政三組盃』は「講談中興の祖」といわれる二代目松林伯圓(しょうりんはくえん)の作である。ここに記した「羽子板娘」はその一番最初の部分にあたり、しばしば独立して演じられる。美貌の町娘が主人公になる話であり、女流の演者が掛けることも多い。
 秋田20万石の殿様がお忍びで浅草を歩いている際、美女の描かれた羽子板を見つけ、この娘に恋をする。この娘は神田今川橋の材木問屋の愛嬢、お染といい、殿様によって無理矢理愛妾にさせられる。それからしばらく経って、酒の席で、お染は殿様の前で取り乱し騒動になる…。

【あらすじ】
 下谷三味線堀に屋敷を構える秋田藩20万石の大名、佐竹右京太夫。年の暮れも迫った12月17日、お供の者2人を連れお忍びで浅草寺の歳の市を訪れる。境内は人人でごった返し、長い刀を差した侍3人は周囲の人たちから迷惑がられる。ついには羽子板を売る店の前で3人は身動きがとれなくなってしまった。店の者は商売の邪魔だからどいてくれと迫り、一行は仕方なくこの店で羽子板を買い求めることにする。いろいろある羽子板の中で、右京太夫が選んだのは文金高島田姿の17〜18歳の娘が模られた羽子板。この娘は神田今川橋の材木商、津之国屋宗兵衛の愛嬢でお染という、今川橋小町とも呼ばれているとびきりの器量よしである。
 右京太夫は、この羽子板の娘をすっかり気に入ってしまった。毎日羽子板を見つめてはため息をする始末。恋の病にかかってしまった。
 年は明けて正月7日、柳橋の料理屋で材木商の寄合があり津之国屋宗兵衛も参席する。ここで佐竹の屋敷に出入りする萬屋の主人から、殿様が羽子板の娘に一目惚れしてしまい、この娘を屋敷に招き入れなければ出入止めにすると告げられていると話す。店に帰った宗兵衛はお染に話すと、萬屋さんが困っているならと、三年の期限で奉公に出ることになった。宗兵衛はお染を佐竹の屋敷へ連れていくが、ここで娘は大変に酒癖が悪いと打ち明ける。お染が右京太夫の側室になって3年経った。右京太夫はお染を寵愛するが、お染の方は殿様をどうしても好きになれない。
 3月3日の節句の事。右京太夫はお染を連れ立って奥方の部屋に入る。右京太夫がお染にばかり執心するので、奥方は彼女を疎ましく思っている。酒、肴が並べられ宴が催される。殿様の頼みでお染は清元を唄うが声・節とも見事な出来である。褒美にと酒の注がれた3合、5合、7合の三組盃が次々と差し出される。いつもは酒を自制しているお染だが、日頃からうっ憤が溜まっていたためかヤケクソ気味に一気に飲み干してしまう。酔いを必死にこらえるお染。奥方に仕える老女の松崎は、しょせんは町人、殿様の前で取り乱すのが怖いのだろうとからかう。怒りと酔いがこらえきれなくなったお染は盃で松崎の頭を殴りつける。さらに右京太夫に向って「バカ殿」となじり、これに怒った右京太夫はお染を斬ろうとするが、お側の者たちが何とかなだめ押し留める。松崎は町人に殴られたことを恥に思って自害してしまった。
 この騒ぎで、お染は座敷牢に閉じ込められてしまう。父、宗兵衛が娘を助け出そうとするのだがその話は別の機会に。




参考口演:田辺一邑

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