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『鍋島の猫騒動 佐賀の夜桜』あらすじ

(なべしまのねこそうどう さがのよざくら)


【解説】
 江戸時代初期、肥前佐賀藩で起こった、鍋島氏と龍造寺氏の間のお家騒動(鍋島騒動)に化け猫伝説を絡めたものが、『鍋島化け猫騒動』として有名になる。江戸時代後期には歌舞伎で、さらに昭和初期には映画として大きな人気を博す。
 肥前佐賀藩の藩主、鍋島丹後守は囲碁の際の争いで家来の龍造寺又七郎を斬り殺す。又七郎の母親は息子の死を嘆き自害するが、その血を舐めた猫が化け猫へと変じる。化け猫は毎夜、丹後守の元に現れて苦しめる…。

【あらすじ】
 肥前佐賀藩、鍋島丹後守は囲碁に凝っている。ある日家来の龍造寺又七郎と碁の対局をするが、丹後守は「待った」を繰り返す。又七郎がこれを聞き入れなかったために丹後守は怒り、彼の首を刎ねてしまった。家来たちは又七郎の首を庭へ埋めて、胴体は母親へ届ける。嘆き悲しむ母親。二、三日経って飼い猫の「たま」が又七郎の首を口にくわえて母親の元へと持ってくる。又七郎の弔いが済むと、母親は丹後守を恨みながら、短刀を首に刺し自害する。その血を猫のたまがペロペロと舐めると化け猫へと変じてその場を去っていく。
 それから毎夜、鍋島家には五尺以上もあるという怪猫(かいびょう)が現われ、丹後守を狙う。そのうちに丹後守は気が触れてしまう。鍋島家の下屋敷が渋谷にあり、小森新左衛門という者が預かっている。この新左衛門に勧められ、丹後守は下屋敷で夜桜見物をしながら酒宴に興じる。酔って庭に出ると、向こうの草むらの陰からギラリとにらむ目玉。怪猫は丹後守めがけて飛び掛かるが、すんでのところで体をかわす。新左衛門は槍を突くと怪猫の眉間に刺さる。さらに新左衛門は逃げる怪猫の脚を斬りつけた。地面には怪猫の血の跡が点々と残っている。新左衛門はそれを追うと足軽の屋敷に辿りついた。縁側のところで血の跡は消えている。怪猫は屋敷の下へ逃げ込んだか。新左衛門は繁次郎という者と共に床下へ入り込む。土のこんもりしているところを掘ってみると、「しゃれこうべ」が出てくる。この上は新左衛門の母親の部屋である。
 新左衛門は屋敷の部屋へもどると、母親が頭に包帯をしており、脚を引きずっている。さらに言葉の尻には「ニャ」と付ける。怪猫が母親を食い殺して、母に化けているのかも知れない。丹後守に相談すると、それは怪猫に違いないから殺してしまえと言う。しかし新左衛門には本当に怪猫なのか母親なのかわからない。
 朝から母親の様子を窺うとふだんと変わらぬ母であり女中の者と冗談を言い合っている。夜中寝ていた母親は布団からむっくりと起き上がる。押入れを開けるとたくさんの子猫たちがおり魚を与える。鏡台の前に座り、包帯を取ると眉間にざっくり口を開いた傷がある。半左衛門は槍で突こうとすると、ひらりと避ける。見る見るうちに母親の姿は変わる。やはり正体は怪猫であった。さらに新左衛門は槍で怪猫を攻めるが、雨戸を蹴破って逃げてしまった。これからもこの怪猫は鍋島家を襲うのだが、その話はまたいつの日か。




参考口演:神田山緑

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