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人情匙加減

(にんじょうさじかげん)



【解説】
 三田で医者をしている阿部元渓という男の息子、元益(げんえき)は25歳だが、堅物でいまだ女の肌というものを知らない。川崎大師への参詣の帰り、雨宿りがてら、品川の加納屋という料理屋に上がるが、これが縁で芸者のお浪と深い仲になる。お浪に夢中になった元益は、家の金を使い込んで間もなく勘当になる。やはりきちんと働かなければと思い直した元益は八丁堀で医者を始め、料理屋に通うのを止める。恋する元益と会えなくなったお浪は頭がおかしくなってしまい、店の座敷牢に閉じ込められてしまう。これを聞いた元益はお浪を身請けしようとするが…。
 三遊亭圓窓や入船亭扇辰が落語としても演じている。

【あらすじ】
 享保年間のころの話。江戸・三田で医者をしている阿部元渓(げんけい)という男がいる。彼には元益(げんえき)という25歳になる息子がいるが、堅物でいまだ女の肌というものを知らない。楽しみが川崎の大師への参詣で、この日もお詣りに行くが帰り道に品川でザッーと雨に降られる。加納屋という料理屋へ雨宿りがてら店に上がるが、これがきっかけで芸者のお浪と深い仲になる。お浪に夢中になった元益は、店にいく金を拵えるために父親の大切にしている医学書を質屋に入れる始末で、間もなく勘当になる。これではいけない、やはりきちんと働かなければならないと思い直した元益は、八丁堀に家を借り医者を始めるが、腕が良く三ヶ月もすると患者が詰め掛けるようになる。甚兵衛とともに川崎大師へお礼参りにいき、その帰り久しぶりに品川の加納屋に挨拶をしにいく。お浪はどうしているかと尋ねると、彼女は元来うぶな女で、夫婦約束までしていた元益が突然来なくなってしまい頭がおかしくなってしまった、今は座敷牢に入れられていると聞かされる。加納屋に対して元益は自分がお浪を引き取りたいと言うが、欲の深い加納屋は身請けなら3両の金が必要だという。さらに加納屋はお浪を抱えている松本屋に行き、あんな病人では世話に金がかかるからと元益に渡す金として3両を貰い受ける。こうして加納屋は都合6両の金を儲けた。
 元益はお浪を引き取り、八丁堀の自宅へと連れて帰る。これから毎日懸命にお浪の看病をするが、半年もするとお浪は病気から快復した。お礼に川崎大師へ2人お詣りをし、その帰りに品川の加納屋へと立ち寄り、お浪の具合がすっかり良くなった旨を伝える。再びお浪を座敷に出せば金儲けが出来ると考えた加納屋。松本屋が元益に年季証文を渡していないのをいいことに、お浪を取り戻そうと考える。八丁堀の元益の元を訪ねた加納屋はお浪を連れていこうとするが、そこへ大家の八兵衛が間に入り、その場は引き取ってもらう。
 翌日、加納屋は八兵衛の家を訪ねる。八兵衛は元益とお浪が一緒になると伝える。「お浪を出しやがれ」と加納屋は怒りだし、目の前にあった猫の茶碗を投げつける。茶碗は柱に当たって割れてしまい、そのまま加納屋は八兵衛宅を出て行ってしまう。
 加納屋と松本屋は名奉行と謳われた南町奉行、大岡越前の元に訴え出る。白洲に呼び出された元益は、年季証文がないことを理由にお浪を加納屋・松本屋に引き渡すよう申し付ける。それはないでしょうと言う元益。さらに続けて大岡様は元益に、お浪を治療するのにどのくらいの薬代が掛かったかを聞く。わざと高額を吹っ掛けるよう何気なく元益に言い伝え、1服2両の薬を1日3服、これを半年与えたと元益は答える。半年間で薬代は総額1,250両、これをすぐに払えと大岡様は加納屋・松本屋に命じる。とても払えるような額ではないというと、ならば両者間で示談にするように大岡様は申し付けこれで一件落着する。
 翌朝早く、加納屋は再び大家の八兵衛の家を訪ねる。加納屋はお浪の年季証文を八兵衛に渡す。さらに八兵衛は先日割った猫の茶碗の代金として20両を要求する。6両儲けたつもりが、14両の損となってしまった加納屋。この後、元益とお浪は末永く、仲良く暮らしたという。




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