講談あらすじメニューページへ メールはこちら |


『肉付きの面(にくづきのめん)』あらすじ




 京橋三十間堀に住む源五郎は、能狂言に使う面を彫らせては日本一という職人。しかしいつも酒を飲んでいてばかりで、名人気質というか気が向かないと仕事をしない。ある年の暮れ、女房にせがまれ、観世様に頼まれている鬼女の面を仕上げる。十三歳になる倅の源之助に頼み、木挽町の観世様の屋敷に届けに行かせる。しばらくすると、源之助は二つに割れた面を持って帰ってくる。事情を聴く源五郎。面を受け取り観世の殿様は最初は喜んでいたが、今日は何日かと聞いて表情が変わった。年の暮れ、金に困ってこれを寄こしたのだ。そういえばこの面には卑しい所がある。公方様の前でこんなものを付けて舞う訳にいかないと短気な観世の殿様は怒り、そうして柱にぶつけて面を割ってしまったのだ。酒を飲んでばかりで腕が鈍ったかとがっかりする源五郎。妻は母親の形見のかんざしを売って金を工面し、酒と鰻の蒲焼を買ってきてくれた。親子三人、川の字になって寝た翌朝。仕事部屋で喉にノミを突き刺し血まみれになっている源五郎を、倅源之助は見つける。面を割られた事を恥に思い自害したか。悲しみにくれる女房と源之助。弔いを出した後、残された二人は、根岸の九尺二間の棟割長屋へ越す。
 母親が針仕事をしてなんとか生計を立てていた。源之助は、親の血を引いたか、父の遺したノミを使って木屑をコツコツと細工するがこれが良い出来である。ある時これを見たとある商人は出来栄えに感心し、二朱で買ってくれる。五六日後、今度はその商人からの注文でまた仕事をする。こうして次々と仕事を貰い、親子二人暮らせるだけの稼ぎを得られるようになった。
 源之助は十六歳になった。四谷の太宗寺(たいそうじ)という寺から、仁王様の彫刻を頼まれた。半年かけてこの仁王様を完成させると、源之助は木彫りを止め、父親の跡を継いで能狂言の面打ちになった。
 源之助、十八歳の時、木挽町の観世家からの使いが来て、鬼女の面を造って貰いたいと依頼される。母親に観世の家から注文を受けた事を告げる源之助。父親の受けた恥をそそごうと決意する。夜眠りもせず、灯明を上げ、コツコツ仕事に励む。父親が造り二つに割られた面をさながら手本にするように幾度も見ながら、また、ノミに父親の恨みを込めるかのように。七日七晩かけて完成した鬼女の面は見事な出来だった。
 観世の屋敷に面を届ける。あまりの素晴らしさに喜ぶ観世の殿様。面を付けニッコリ笑う。そしてこれを取ろうとするがどうしても取れず、観世はのたうち回って痛がる。これはどうしたものかと根岸の源之助を呼ぶ。源之助は観世の前で、自分は源五郎の息子で、かつて父親の造った鬼女の面を届けた者だと打ち明ける。父親の造った面のどこに卑しい所があったかと尋ねると、観世は「卑しい所はない」と答えた。そうすると取れなかった面はぱかっとはずれた。面の内側には血がベットリ付いていた。観世は、父親源五郎に悪い事をしたと詫び、源之助の後援となる。源之助はますます腕を上げ名人と呼ばれるようになる。取れなかった鬼女の面は「肉付きの面」として、観世家に後々まで伝えられる。


参考口演:宝井琴調

講談るうむ(http://koudanfan.web.fc2.com/index.html
inserted by FC2 system