『講談るうむ』トップページへ戻る講談あらすじメニューページへ メールはこちら |


『天保六花撰〜丸利の強請』あらすじ

(てんぽうろっかせん〜まるりのゆすり)


講談連続物『天保六花撰)』全編のあらすじはこちらをクリック

【解説】
 『天保六花撰』は講談中興の祖といわれる二代目松林伯圓(1834?〜1905)の作。世話物の連続講談であり、河内山宗俊、片岡直次郎、金子市之丞、森田屋清蔵、暗闇の丑松、三千歳、この六人の悪党が主人公になる。
 『丸利の強請』では河内山宗俊が主人公になる。宗俊は、11代将軍・家斉公が寵愛する側室の父親に取り入っている。その権威を笠に着て、ゆすり、たかりと悪事を重ねる。

【あらすじ】
 河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)は江戸城に出入りするお数寄屋坊主であるが、普段はブラリブラリと遊び暮している。自分の屋敷で賭場を開く、或いはゆすり・たかりを繰り返すという悪党坊主である。
 ある夏の早朝のこと、宗俊は安次郎という供とともに神田橋に差し掛かる。気が付くと頬かむりをした一人の男がジッとこちらを見ている。彼は山崎町に住む暗闇の丑松であった。安次郎を先に返し、宗俊と丑松は本所河岸の曙という会席屋に入る。丑松は5両の金が欲しいと宗俊に頼む。すると宗俊は丑松の紙屑拾いの格好になれという。これから自分は日本橋の浮世小路にある丸屋利兵衛の店に行く。丑松には紙屑屋の格好をしてもらって店の前を行ったり来たりして欲しい。そこで自分は鼻をかみ、紙をポーンと通りに放り投げる。丑松はその紙をハサミでつまんで駕籠に入れて、下谷練塀小路の自分の家に来て欲しい。そうすれば10両、20両の金を丑松にくれてやる、こう宗俊は言う。
 四ツ(午前10時頃)になって、宗俊がやって来たのが、日本橋・浮世小路の丸屋利兵衛、人呼んで丸利という店。印籠、巾着、紙入れ、煙草入れなどを売る袋物屋である。店の番頭は宗俊を丁重にもてなす。宗俊は煙草入れを求めに来たという。緒締めだけは自分で選びたいので見せて欲しいというと、番頭は桐の箱に入った珊瑚樹の緒締めを見せ、片方の値は9両3分、もう片方は13両2分だと言う。宗俊は双方を手にして見較べ、9両3分の方を求めると言う。こう言っている隙に13両2分の方を親指と人差し指に挟んで、一回くしゃみをする。懐から紙を出して、誰にも分らぬよう緒締めを紙に包み、クルッとひねって、表の通りにポーンと放り投げる。これを紙屑屋姿の丑松がハサミでつまんで駕籠の中に入れ、何食わぬ顔で立ち去っていく。
 番頭が調べてみると、13両2分の緒締めが一つ見当たらない。番頭は宗俊に尋ねるが、素知らぬ顔をする。ひょっとして何かのはずみで袂に入ってしまったのではと、番頭はさらに尋ねる。宗俊は自分のことを疑っているのかと言う。店の奥から主の利兵衛が出て来た。宗俊を奥の座敷に通して、着物を調べさせて欲しいと言う。宗俊は羽織、帯、着物と脱いで、それを番頭が叩いて検めるが緒締めは見つからない。
 利兵衛が詫びると、宗俊は間違いは誰にでもあることだと言う。さらに宗俊は、町人ごときに裸にされ恥をかかされたので、ここで切腹したいと言う。そうなればこの店はお取り潰しになり、利兵衛や番頭の身もこのままでは済まされないだろう、こう迫る。ここまで言って、宗俊はガラリと態度が変わる。「俺は下谷練兵衛小路に住む、お数寄屋坊主、河内山宗俊だ」、自分の素性を明かす。利兵衛は驚いた。しまった、一杯食わされたか。しかし、将軍家にも出入りする宗俊相手ではどうにも出来ない。利兵衛は100両の金を宗俊に渡すと、宗俊は捨てセリフを残して店を去っていく。下谷練塀小路の家に戻って、丑松には30両の金を与える。宗俊の手元には70両の金と13両2分の緒締めが残ったのであった。




参考口演:神田阿久鯉

講談るうむ(http://koudanfan.web.fc2.com/index.html
inserted by FC2 system