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『忠治山形屋』あらすじ

(ちゅうじやまがたや)


【解説】
 連続物の『国定忠治』の中で最も掛かることの多い一席である。国定忠治(1810〜1851)は江戸時代後期の侠客で本名は長岡忠次郎。若いころから賭場に出入りし17歳の時に初めて人を殺す。親分になってからは飢饉に苦しむ民衆を救うなどして、義賊的英雄となったと伝えられる。
 岩鼻の代官屋敷を襲った忠治は、大戸の関所を破り信州へと向かう。善光寺に参詣に行く途中、川に身投げしようと一人の百姓に遭遇する。年貢の金が払えず、山形屋という女郎屋に娘を売り金を手に入れたが、その金を盗まれてしまったという。しかしこれには裏があると忠治は見抜く…。

【あらすじ】
 天保8年は飢饉に苦しんだ年であった。国定忠治は上州・岩鼻の代官屋敷を焼き討ちにし、捕り方を逃れるため赤城の山に籠る。のちに赤城の山から離れ、大戸の関所を破って子分一同と別れを告げる。
 善光寺に参詣しようと信州路を進み長野の街に入ると、川に身投げをしようとしている男と出くわす。助けて話を聞くと、男は越後・長岡の嘉右衛門という百姓で、年貢の金を払うことが出来ず、一人娘を権堂(ごんどう)の宿の女郎屋・山形屋藤蔵という者に預けて、身代金として30両を手にした。その金を持って郷へ帰る途中、一里塚の庚申堂のところまで来ると、泥棒に囲まれてその金を盗られてしまったと涙ながらに話す。その泥棒は三人連れだったというが、なぜ嘉右衛門が大金を持っていることをその泥棒は知っていたのか、これは何かあるなと忠治は思う。すぐにこのカラクリに気付き、この金は戻るかも知れないと嘉右衛門を勇気づける。嘉右衛門の話では、この山形屋の藤蔵という男は十手・取り縄を預かる目明し(犯罪の捜査をする役人の協力者)の親分で、子分は二百、三百といると言う。
 忠治と嘉右衛門は権堂の山形屋の店にやってくる。二人は座敷に上げられ、藤蔵と対面する。忠治は自らを甲州郡内の彦六と名乗って話し始める。酔って一里塚の庚申堂の中で寝ていたところ、堂の前で話し声がするのに気づく。奴らは泥棒で、山形屋の藤蔵という者の指図で嘉右衛門から金を盗ったと話していた、こう語る。忠治は藤蔵の悪事を暴き立てて迫るが、逆に藤蔵は棚から十手を取り出し脅す。
 「甲州の彦六とは真っ赤な偽り。上州郡内佐位郡(さいごおり)国定村の忠治とは俺のことだ」、忠治はついに本当の名を名乗る。その赫然たる様に藤蔵は驚き、「ただの方ではないと思っていました」とすっかり怖気づいてしまった。忠治の機嫌を取るために酒や料理を振る舞う。藤蔵は奥の部屋に飛び込んで金を盗んだ三人を呼び出す。相手が国定忠治では下手に逆らえば命はない。三人にどこか遠くに去るよう言いつける。忠治は藤蔵から嘉右衛門と交わした証文を無理矢理奪って、それを破って火鉢にくべる。さらに駕籠を手配させ、嘉右衛門とその娘を故郷の長岡へと送るのであった。




参考口演:一龍斎貞水

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