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『荒大名の茶の湯(大名荒茶の湯)』あらすじ

(あらだいみょうのちゃのゆ・だいみょうあらちゃのゆ)


【解説】
 『大名荒茶の湯』という演題も使われるが、ややこしい。
 『難波戦記』という長い連続物のうちの一部。講談にしては珍しく、頭から終わりまで滑稽な描写が続く。それゆえか落語にも移植され『荒茶』などの演題で頻繁に演じられている。豊臣秀吉が亡くなり、天下を狙う徳川家康は秀吉恩顧の7大名を味方に引き入れようとと画策する。軍師の本多佐渡守が大名たちを茶の席に招待するが、『茶』など知らない彼らは珍騒動を引き起こす。

【あらすじ】
 豊臣秀吉が病気で亡くなって、秀吉恩顧の荒大名七人が団結する。これに驚いたのが徳川家康。この七人を敵に回せば天下を取ることが出来ない。そこで軍師の本多佐渡守に相談すると、佐渡守は自分の屋敷の中に立派なお茶室を造らせ、大名七人に茶の湯の招待状を出した。まず加藤肥後守清正。彼の身長は2m30cm、顔の長さが49cm、アゴから延びる髭の長さもまた49cm、合わせて1メートルほどもあったという。その他の大名は、福島正則、池田輝政、浅野幸長、加藤嘉明、黒田長政、細川忠興という面々である。この大名たちは幼少の頃から戦いに明け暮れていたので、細川を除いて茶などやったことがない。細川だけは千利休に付き三斎(さんさい)という号を持っている。他の6人は細川に茶の飲み方を尋ねると、彼はただ拙者の真似をしていれば良いという。茶の席では大きな茶碗に入った茶を順々に回して飲み、最後の者が茶を飲み干して、茶碗を誉める。この最後の者を『詰め』という。戦でいえば殿(しんがり)である。詰めの役は福島正則が務めることになる。
 これから7人は本多佐渡守の屋敷へやって来る。こういう場に馴れている細川は「佐渡、茶へ招いてくれてかたじけない。その方のお出迎え余は満足じゃ」と挨拶をする。加藤、池田、浅野とこの挨拶を次々と真似る。最後の福島はまったく同じでは価値がないと名古屋弁を使う。7人は邸内の廊下を歩く。細川は戦の古傷があり首が少し右に曲がっている。後の者たちも首を右に曲げる。最後の福島はみな同じでは面白くないとひとり首を左に曲げる。一同首を傾けた姿を見て笑ってはいけないのだが、佐渡守がプッーと吹きだしてしまう。細川は首をまっすぐにしろと、加藤清正の脇腹を指でチョンと突く。加藤は池田を指で突く。順々に突いて加藤嘉明は福島を突くが、福島は次に突く相手がいない。そこで加藤嘉明を突き返す。
 しばらく待って茶室に案内される。茶室には『にじり口』という狭い入口から入る。黒田はスルスルと中に入るが、身長2m30cmという大男の加藤清正は身体がドンとぶつかってしまう。続く者たちもわざと身体をドンとぶつける。最後の福島は戸を壊してしまう。茶がふるまわれて、細川は難なくこなすが、加藤清正は手がブルブル震えている。茶碗の中に49cmあるというヒゲが埋まってしまう。ヒゲを2本の指で挟んで下に降ろし、茶を茶碗の中へ戻す。茶碗の中にはギラギラ油のような物が浮かんでいる。池田はとてもこんなものは飲めないと、口に含んだ茶を茶碗の中にもどしてしまう。こうして茶碗は順々にまわり最後の福島正則になったが、茶の量がまったく減っていない。福島は鼻をつまんで無理に茶を飲み干す。細川は福島に「茶碗をこちらに回せ」という。福島は茶碗の端をつかみ茶碗を回して放り出す。茶碗は畳の上をヒュルヒュルと回り、細川の前でピタリと止まる。「こんな面白い茶の湯は初めてです」本多佐渡守は笑いをこらえきれない。
 この後は座敷を移して酒宴が開かれ、そこには途中から家康も参席する。こうして家康は荒大名7人を味方に引き入れたという、『難波戦記』という長い長い話のうちからの『荒大名の茶の湯』という一席。




参考口演:神田春陽

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