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『長短槍試合』あらすじ

(ちょうたんやりしあい)


【解説】
 三百数十席もあるといわれる連続物『太閤記』のなかでもポピュラーな読み物で、『長短』とも略される。東京で演じられることも多い。
 織田信長が家来を集めて、武具のうちで何が一番有利であるかを尋ねる。槍の指南番の上島主水は短い九尺柄の槍が一番であると主張し、一方、木下藤吉郎は長い三間柄の槍が最も有利であると言う。そこで、信長の前で短い槍を持った軍勢と長い槍の軍勢で勝負をし、どちらが強いか試合をすることになった。上島方は必至で、朝早くから夜遅くまで槍の猛稽古する。ところが藤吉郎の側は足軽たちを屋敷に招待し豪勢な御馳をもてなす…。

【解説】
 織田信長が大勢の家来を清洲の城に集めて、刀、弓矢、鉄砲などの武具のうちどれが一番有利であるかとお尋ねになった。槍の指南番の上島主水は短い九尺柄の槍が一番利があると答えた。一方、木下藤吉郎は長い三間柄の槍に利があると思うと言う。三間というと今でいう5メートル40センチである。そこで殿の御前で短い槍と長い槍とでどちらが強いか試合をすることになった。百人の足軽を集め、三日間槍の練習をし、四日目に試合をすることにする。足軽の中では上島の方に就きたいという者ばかり。そこでどちらの側に就くかくじでより分けることになり、五十人ずつが決まった。
 木下方に決まった者たちは元気がない。木下の屋敷へ着くと右側の部屋には煮魚、刺身が大きな皿に盛られ、御燗に付けた酒が用意されている。左の部屋にはきんつば、大福、あんころ餅が並んでいる。酒の好きな者は右の部屋へ、甘い物が好きな者は左の部屋へと案内される。槍の稽古に来たのになぜ御馳走があるのか、いぶかしがる足軽たち。藤吉郎は自分は槍の事はよく知らないと打ち明ける。勝負に勝つことをあきらめた足軽たちは半ばやけくそで飲食する。
 二日目、昨日よりさらに豪勢な御馳走が用意され、足軽たちはたらふく食事をする。
 最後の三日目。連日御馳走を頂いて太ってしまった足軽たち。藤吉郎に試合に勝つ法を尋ねる。藤吉郎は足軽たちに三間の槍を与え、太鼓や号令の合図と共に為す動作を教え込む。足軽を二十五人ずつに分け、第一軍には「稲刈り」という合図と同時に、上島方の兵の向う脛を稲を刈るような格好で叩くよう教える。第二軍には「麦打ち」という合図と共に麦を打つように敵兵の陣笠を上から叩くよう教える。さらに褒美として、槍を取った者には百、陣笠を取った者には二百、相手を生け捕りにした者には五百を与えるという。感謝し士気の上がる藤吉郎方の兵。
 一方、上島はもし負けたなら指南番を辞めなければならないので必死である。上島方は朝早くから夜遅くまで猛稽古するが三日間で覚えられるようなものではない。出来ない者を容赦なく殴ったり叩いたりで、上島への評判は悪く士気は下がるばかりである。
 四日目、試合の当日、桜の馬場に織田信長は着席する。太鼓の音とともに試合が始まった。合図とともにキビキビ動く木下の軍。上島は藤吉郎が槍術のみでなく教練を教えていることに驚いた。一方、上島方の軍は号令をかけても思い通りに動いてくれない。
 いよいよ槍を使った試合が始まる。槍の真ん中をつかんだ上島の兵は乗り込んでくる。逃げる木下の軍。藤吉郎の「止まれ」という号令と共に止まり、続いて「稲刈り」という声と共に上島方の兵の向う脛を叩く。痛がる上島方の兵。次に「麦打ち」という号令で、敵兵の陣笠を上から叩く。褒美を分け合うことにしてわざと木下方に捕まる者が続出する始末。試合は木下藤吉郎の一方的な勝利で終わった。
 「こんな滅茶滅茶な槍の使い方はあるか」と怒る上島。対して藤吉郎は、勝負であるのなら槍のみを使わずいかに知恵を使って勝つかが殿への真の御奉公だと言う。信長は喜び満足して、藤吉郎に褒美を与えた。




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