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『汐留の蜆売り〈鼠小僧次郎吉〉』あらすじ

(しおどめのしじみうり)



【解説】
 『鼠小僧次郎吉』のなかで特にこの部分は有名で独立して演じられることが多い。『しじみ売り』などの演題で、落語でもさまざまにアレンジされ演じられている。
 江戸に戻った鼠小僧次郎吉はいまは表向きは魚屋の旦那である。バクチの帰り道、船宿でチビリチビリとやっていると、一人の蜆売りの子供が、雪降るなか素足でやってくる。次郎吉は蜆をすべて買い取り、川の中に戻してやる。なぜこのような蜆売りをしているのか、子供から事情を聴くと…。

【あらすじ】
 爛熟した江戸末期、文化・文政年間の話。鼠小僧次郎吉は江戸を離れて十年。故郷忘れがたく江戸の街に戻ってくる。日本橋茅場町に泉屋という魚屋を出す。もちろん魚屋といっても名ばかりである。
 ある冬の寒い日、表に出たのが八つ過ぎで雪まで降ってくる。バクチですっかり取られ、汐留の河岸から茅場町まで船で帰ろうと、伊豆屋という馴染みの船宿に入る。チビリチビリと雪見酒をしていると、「しじみ〜ヨォしじみ〜ヨォ」と11歳くらいの子供が、天秤を担いで素足でやってくる。気の毒に思った次郎吉は蜆をすべて買い取り、それを川へ戻せと言う。
 次郎長がこの子供から事情を聴くと、家では40歳の母親と21歳の姉が待っているという。姉はかつて芸者をしており、新橋の金春(こんぱる)に小春という名で勤めており、三田の質屋の若旦那、正之助といい仲になる。やがて若旦那は勘当になり、小春の元へ転がり込むが、小春も思うように客が取れなくなる。
 こんなことをしていてはいけないと、若旦那は碁打ち、小春は旅回りの芸者ということで、2人して旅に出る。2人で箱根の木賀(きが)の湯治場まで来て、碁の強い相手がおり、有り金を残らず取られる。証文を書いて金を借りてまた碁の勝負に臨むもこれもあっけなく取られてしまう。相手は翌日になって、昨日貸した金を返せと言ってきた。親分という男が出て来て、金が払えないなら小春を寄こせと責め寄ってくる。ここでもう一人良い親分が登場し、2人が借りた金をすべて返してくれ、さらに「これで上方見物でもしろ」と30両の金をくれた。
 若旦那と小春は有難くこの金を受け取り西へと向かう。駿府で旅籠に泊まった折に金を払うと、その小判には丸に「ト」の字がある。これが元で小判はとある大名屋敷から盗まれたものであると分かった。2人は捕まったが、取り調べにも恩ある人のことは喋らない。口を割らない2人は江戸へ送られ、若旦那は伝馬町の牢へ、小春は町内預けになった。小春は私みたいな女に引っかかったばかりにと若旦那を思って泣き、母親はそんな小春が可哀そうだとまた泣く。
 そのうちに母親は目を患い、自分は蜆売りを始めるが、これがなかなか売れず、姉が癪を起したと言っても薬を買う金もないという。鼠小僧は、少しばかりの金を子供に渡し、まっとうに生きてくれと言う。他でもない、箱根の木賀の湯治場で若旦那と小春という芸者の2人に30両の金を恵んだのは鼠小僧次郎吉であった。このまま放っておくわけにはいかない。2人をこれから助けに出すという、一席。




参考口演:一龍斎貞友

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