『講談るうむ』トップページへ戻る講談あらすじメニューページへ メールはこちら |


『出世証文』あらすじ

(しゅっせじょうもん)


【解説】
 講談で『出世〜』という演題であると武士を扱った読物が多いが、これは町人が主人公の話。『出世証文』とは将来出世して、返済能力ができた時に返済することを記した証文のことである。
 おもちゃ屋の淡路屋喜三郎は商売に失敗し多額の借金を負うが、貸主である問屋衆は出世証文ということで引き受けてくれた。江戸に出た喜三郎は、ヨウカンの製造・販売で成功する。一方、喜三郎に対して「おきぬ」という娘が恋心を抱いている…。

【あらすじ】
 大坂老松町のおもちゃ屋、淡路屋喜三郎は真面目で手堅い人である。ある日、妻に勧められて150両という大仕事を引き受けたが、運搬する船が時化に遭い商品は全て廃棄。多額の損害を被った。妻は家財道具と共に消えてしまう。後払いで買い付けた商品の代金が支払えないが、125両という借財を問屋衆8軒は出世証文ということで納得してくれた。
 高津に住む兄夫婦から3両を路銀としてもらい受け、喜三郎は江戸へ出る。上州屋という店で身元引き受けをしてもらい、仕事の紹介を受けて、菓子屋で住み込みで働く。餡(あん)を炊く仕事をしているうちに大坂で流行している寒天を入れた練りヨウカンを江戸で売れば人気になるだろうと思いつく。真面目に働く喜三郎は店の主人にも気に入られるが、職人頭の不正を知り、嫌気が差して店を辞めてしまう。
 再び上州屋の紹介で、次に両国米沢町で鰹節を扱う三河屋に奉公する。ここでも喜三郎は良く働き、店の夫婦に見込まれる。夫婦には「おきぬ」という娘がいる。おきぬは喜三郎に惚れ、それを知った店の夫婦は喜三郎に婿になって貰いたいと頼む。しかし喜三郎は125両という莫大な借財があるからとこれを断る。居づらくなった喜三郎は店を辞める。
 三度上州屋を訪ねる喜三郎。今度はこの上州屋で住み込みで働くことになった。かねてより考えていた練りヨウカンの製造を試行錯誤し、ようやく納得のいくものが出来た。
 日本橋に小さな店を構えこれを売ると大層繁盛する。店はどんどん大きくなり、奉公人を雇い、喜三郎は店の帳場に座る。
 ある日、一人の尼さんがヨウカンを求めて店を訪ねる。それはおきぬであった。喜三郎以外の男性には嫁がないと決めたおきぬは出家し尼になったという。その夜、店の戸を叩く音がする。来たのは両国三河屋の亭主であった。どうしてもおきぬを嫁に貰って欲しいと懇願する。おきぬは還俗し上州屋の仲人の元、2人は結ばれる。
 喜三郎は3年間みっちり働き、店は前にも増して立派になる。金も十分に貯まり、喜三郎とおきぬは借財を返すために大坂へと向かう。まず高津の兄夫婦に路銀として受け取った3両を返済し、さらに30両を差し添えて渡す。次に8軒の問屋衆とはそれぞれ納得のいく形で清算した。江戸に戻り、喜三郎の店はますます繁盛したという。




参考口演:神田こなぎ

講談るうむ(http://koudanfan.web.fc2.com/index.html
inserted by FC2 system