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『鈴木久三郎 鯉の御意見』あらすじ

(すずききゅうざぶろう こいのごいけん)


【解説】
 数多くある、徳川家康の逸話の中からの一席。
 家康は「良い兆があるから」と城内の水鳥を捕ること禁止してしまう。これを破って2人の足軽が、鴨を捕まえて食べてしまい死罪を待つ身となる。たかが鴨のことで死罪にするとは殿様はやり過ぎではないかという声も上がるが、城内では意見する者はいない。城内の生け簀の中では信長様から拝領した鯉が大切に飼われている。家臣の鈴木久三郎はこの鯉を勝手に捕らえ、料理にして食べてしまう。これを知って激怒した家康だが、久三郎には深い意図があった。。

【あらすじ】
 ある冬の日のこと。浜松城の堀に鴨が泳いでいる。これを見た徳川家康は「瑞祥」(ずいしょう:良いことが起こる兆し)あるとして、城内の水鳥を捕ることを禁止する。これを守らず牧村と野崎、2人の足軽が鴨を捕り鍋にして食べてしまう。事が発覚し2人は召し捕られ牢の中に入れられて斬首を待つ身となる。家中の者たちからもたかが鴨のことで殿様はやり過ぎではないかとの声が上がるが、正面から意見する者はいない。
 城内には生け簀があり、信長公から贈られた鯉15〜16匹が飼われている。家臣の一人である鈴木久三郎は、殿との将棋の勝負で勝った褒美として生け簀の鯉を頂くことになったと池番に告げて、大きな鯉2匹を網ですくいあげる。これを御膳所へ持っていって鯉の洗いと鯉こくを拵えてもらい、当番の者たちと共に酒を飲みながらドンチャカ騒ぐ。
 生け簀にやってきた家康は池番から、久三郎が鯉2匹を持ち出したことを聞かされる。もちろん家康に無断でしでかしたことであり、呼びつけると酒に酔った久三郎はフラフラ歩きながらやってきた。家康はなぜこのような事をしたのかと問い質す。久三郎は家康を「日本一の大馬鹿」と罵る。怒り心頭の家康は刀を抜いたが久三郎は手刀でその刀を叩き落し、腕を掴んで家康を投げ飛ばしてしまう。
 忠義一徹の鈴木久三郎がなぜこの様な事をするのか。久三郎が目に涙を浮かべる様を見て家康は気づいた。これは「諷諫」(ふうかん:遠回しな忠告)である。自らの愚かさを悟った家康は牢の中の足軽2人を釈放し、彼らの面前で謝罪する。また自分に意見してくれた久三郎には感謝の言葉をいう。
 身分の低い自分たちの目の前で、殿自ら頭を下げたことに感銘を受けた足軽2人は、いっそう忠義を尽くそうと決意する。のちの三方ヶ原の戦いにおいて、追手に追われ敗走する家康をこの2人の足軽は死を賭して助け、両名とも命を落としたという。




参考口演:宝井琴梅

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