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『出世の白餅(出世高虎、意地っ張り五千石)』あらすじ

(しゅっせのしろもち、しゅっせたかとら、いじっぱりごせんごく)


【解説】
 『出世の白餅』『出世高虎』神田派では『意地っ張り五千石』どの演題も良く使われる。『白餅』は『城持ち』に掛かる。藤堂高虎(1556〜1630)は広く知られた戦国大名で、生涯に七回(八回?)主君を変えたと言われる。江戸時代になり、最終的には伊勢津伊賀上野三十二万三千石の大大名になる。この読物はその家臣である居相孫作との主従関係でありながら、同時に強い友情で結ばれた二人の交友を描いた話である。

【あらすじ】
 近江国の藤堂村に、百姓の源助の倅で与右衛門という者がいた。大変な父親思いな男で、農作業の合間には相撲や剣術の稽古をしていた。与右衛門十六歳の時父親は亡くなり、全ての財産を売り払い村を出る。一応侍の格好をしてどこかの大名へ仕官しようとするが戦功がなければそれも見つからない。与右衛門はとある大名家の玄関先で見た衝立(ついたて)をヒントに高虎と名乗るようになる。
 摂津国尼崎の小さな大名家で足軽になる。せっせと勉強をしている孫作という者と仲良くなり兄弟同様の仲になる。その大名家を二人で出奔するが、すぐに無一文になり食べるものもない。伊勢国四日市で、どうせなら一番の所へ行こうと本陣森田屋に泊まる。腹が減ってしょうがない二人は玄関先の祝い用の餅を見てあれが食べたいと言い出し、宿の主は白餅を枡に盛って二人に提供する。これには「枡枡(ますます)御出世、末は白餅(城持ち)」の意味があるとのことで二人は感心する。翌朝二人は無一文であることを打ち明けるが、宿の主は「御出世の暁にお支払いください」と言い、さらに永楽銭五貫文を差し出した。
 二人は四日市を出立し関東、そして東北の松島まで来るが、相変わらず仕官する大名は見つからない。高虎は冗談のつもりで、もし自分が城持ち大名になったら孫作を家来にすると言う。こう言われて孫作は怒った。もし本当に高虎が一国一城の主になったのなら、自分はその城で貴様の馬の轡(くつわ)を取る、こう孫作は言い捨て、二人は喧嘩別れする。
 十数年の歳月が経った。高虎は秀吉の目に留まり、とんとん拍子に出世して、伊予今治八万石の城主となった。孫作は京極家に仕え家老上席三千石取りとなる。ある時、居相(いあい)孫作は高虎の城を汚い身なりで訪ねる。久々に二人は対面した。孫作はかつて松島で約束したとおり、高虎の馬の轡を取ると言う。頑固に言い張る孫作に困ってしまった高虎は、彼を戦の時には馬の轡を取る別当にし、戦でない平時は特別手当として五千石を取らせるということで決着した。
 関ヶ原の戦いでは高虎は徳川方に味方し、その後、伊勢津・伊賀上野三十二万五千石の城主に出世する。かつて孫作と共に世話になった四日市の宿屋の主には百両の金子と餅米二百俵を渡した。居相の家は正式に家老の列に加わり、永く藤堂家に仕えたという。





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