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『木村又蔵 鎧の着逃げ』あらすじ

(きむらまたぞう よろいのきにげ)



【解説】
 演題の頭に『姉川軍記』と付く場合もある。分かりやすい話であり、前座などの若手が演じることも多い。
 木村又蔵は、戦国時代から江戸時代前期にかけての武将で加藤清正の家臣。講談で有名になった人物であり、実像はよく分かっていない。
 木村又蔵は貧乏な侍である。かつて加藤清正から恩を受け、彼と共に戦いたいと思っているが鎧を買う金がない。そこで一軒の店に入り鎧を試着させてもらって、そのまま走って逃げてしまった…。

【あらすじ】
 以前、加藤清正から恩を受けた木村又蔵という貧乏侍がいる。姉川の合戦が始まり、清正も出陣しているに違いない、さっそく戦場に乗り込んで清正に恩返しをしようと思っているが、あいにくと鎧・兜が手元にない。そこで屋財家財を全部売り払って金に換えるが、三貫五百にしかならない。それでもなんとかなるだろうと、金を懐に入れ長浜の城下にやってきた。とある武具店に入り、鎧の価を尋ねると三十両だという。又蔵は三貫五百、負からんかという。店主は三貫五百くらいだったら値引きすると答える。又蔵はそうではない、三貫五百に負けろというと、店主はそんな金で鎧が買えるはずはないだろうと、又蔵を追い払う。
 思い直して、次に大黒屋という店に入った。黒板南蛮鉄の鎧の値段を尋ねると六十両だという。又蔵は鎧が身体に合うか確かめてみたいと言い、この鎧を着る。一番槍を見たことがあるかと聞くと、主は見たことがないと答える。又蔵はならば一番槍の姿を見せるという。麻風呂敷の中に三百五十両が入っていると言って、これを店の主に預けた。又蔵は槍を小脇に抱えて走り出す。主ら一同は喜んでこれを見ていたが、又蔵は路地に入り込み、そのまま姿を消してしまった。これは鎧の着逃げではないか。麻風呂敷を開くと三貫五百しか入っていない。追いかけようにももう後の祭りである。
 又蔵は虎の子走りで姉川の戦場に近づくと、ジャンジャンと陣鐘の音が聞こえる。小高い丘に駆け上がると、織田・徳川連合軍と浅井・朝倉連合軍の合戦の真っ最中である。木下藤吉郎秀吉は苦戦をしており又蔵は丘を降りる。すると街道筋を馬に乗った一人の法師武者が通る。彼こそ朝倉の家臣、網島瑞天坊(あみじまずいてんぼう)であり、又蔵は槍で馬の腹を突き刺すと、馬は棹立ちになり、瑞天坊は落馬して命を落とす。これから姉川の戦いに乗り込み、又蔵は大きな手柄をあげる。合戦が終わって、詫びるとともに莫大な礼を大黒屋の主に与えたという。




参考口演:一龍斎貞橘

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