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『鎌倉星月夜』あらすじ

(かまくらほしづきよ)



【解説】
 鎌倉時代初期の1213(建暦3)年に起こった和田合戦は、幕府内で起こった有力御家人和田義盛の反乱であり、義盛が敗死した後は、北条氏の執権体制はより強固なものになる。
 『鎌倉星月夜』はこの和田合戦の端緒部分を題材にした読物。奥女中取締役の松島と和田義盛の三男である朝比奈三郎義秀の悲恋を描き、『松島・朝比奈恋物語』と副題が付くこともある。女流の方が掛けることも多い。

【あらすじ】
 今から850年以上前の鎌倉時代の話。三代将軍の鎌倉右大臣・源実朝公は風流なことが好きで、歌道にも優れたお方である。毎月、殿中ではお歌の会が開かれる。奥女中取締役の松島は十九歳で大変美しい女性であった。当月のお歌の会ではこの松島が優れた歌を詠みあげる。そこに居合わせた時の執権・北条相模守義時(よしとき)の次男、名越次郎朝時(ともとき)はこの賢くも美しい女性に一目惚れする。
 老女の賎機(しずはた)を使って松島に恋文を送る。これは艶書に違いないと思った松島は、朝時を怒らせてはならないと思い、封も切らずにそのままにしておく。朝時はもう一度手紙を送るがやはり松島は返事を寄こさない。三通目が届き、松島は手紙を朝時に突き戻すよう賎機に告げる。賤機から手紙を受け取り、松島からの返書だと思い喜んだ朝時だが、自分の出した手紙が突き返されただけだと分かるとひどく落胆する。想いが叶わなかった朝時だがどうにも諦められない。
 翌月の夜、お歌の会で座敷から松島が出てきたところで、衝立の陰に隠れていた朝時は後ろから彼女に襲いかかる。松島は騒ぎもせず「貴方様を嫌いなわけではないが、私とでは身分が違い過ぎます」と逃れようとするが、それでも朝時はその手を止めようとしない。想いを遂げようと松島を押し倒す。ここで始めて松島は「あれっー」と悲鳴を上げる。そこを通りかかったのが所司代別当職・和田左衛門尉義盛の三男、朝比奈三郎義秀(あさひなさぶろうよしひで)である。女性の悲鳴を聞きつけ、夜闇の中、怪力無双の朝比奈は誰とも分からず、ムンズと朝時を吊り上げ放り出してしまう。
 これがきっかけで今度は松島が朝比奈に惚れてしまった。松島は賤機を使って恋文を送る。「張りつめし胸の氷の苦しさを朝日にとける折を松島」という歌を添え、何気なく恋心を打ち明けるが、鷹揚な性格である朝比奈は返事も出さず手紙をそのままにしておく。ますます恋心が燃え上がる松島は二度・三度と恋文を送る。三通目の手紙を受取りさすがの朝比奈も心を動かされた。妻とするのに松島は非の打ち所が無い女性ではないか。
 朝比奈は兄の朝盛に相談をしその話が父親の和田義盛に伝わり、これが縁で御台様・政子の媒酌で朝比奈義秀と松島は結ばれることになった。吉日を選んで二人は婚礼を挙げる。
 一方で朝時は松島と朝比奈への憎しみを募らせる。政子はかわいい甥・朝時のためにと朝比奈と松島の仲を引き裂き、朝時と松島を無理矢理結ばせようとするが、思い悩んだ松島は自害してしまう。これが元で和田一族と北条家の争いへと発展するのだが、その話はまたいつの日か。




参考口演:一龍斎貞弥

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