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『兜奇談(新田義貞の兜)』あらすじ

(かぶときだん・にったよしさだのかぶと)



【解説】
 『新田義貞の兜』という演題が使われることもある。
 越前国・福井を舞台とした読物。四代将軍家綱の御代、福井の燈明寺(とうみょうじ)村の権右衛門という百姓が、水田で鍬をふるっていると泥田の中金属製の丼鉢のようなものを見つける。これがなんだか分からない権右衛門。村人はこれは神様が使う燈明皿だと教えられる…。

【あらすじ】
 この話の舞台は越前国・福井の燈明寺畷(とうみょうじなわて)という場所である。万治三年の五月雨時。四代将軍家綱の時分。燈明寺村の権右衛門という百姓が、女房のおすえと共に、水田の手入れをするために鍬をふるっていた。空の模様がおかしくなってきたのでもうこれで止めにしようと思っていたところ、鍬にカチンと何かが当たる。2人して泥田の中から引きずり出し、水で洗うと金属製の丼鉢、あるいは桶みたいなものである。何に使う物か分からず、紡いだ糸を入れる器に利用していた。そこへ村人の市兵衛と八右衛門がやってきてその器を見る。器には金象嵌で「三十番神」と刻まれている。これは神様が使う有り難い燈明皿だと言う。
 福井の城下、照手町(てるてまち)の道具屋・新助という者が権右衛門の家を訪ね、一服する。ふと、先の燈明皿が目に留まり、2貫の金でこれを買い求める。店に持ち帰るが、燈明皿にしてはやけに大きく、見ると両端のところに穴が開いている。紐を結び付けておいて、蓮の花を活けて売り物のタンスの上に乗っけておく。
 ある日のこと、立派なお武家が店の中に入って来る。越前・松平光通公の家来で堀又右衛門という者である。又右衛門はその皿に目を付け、これは新田義貞の兜の鉢に違いない、売って欲しいと言う。そうとは知らなかった新助は百両で売ると言うと、又右衛門は怒って帰ってしまう。
 その夜、新助は小雨の降る中、水田に大軍勢が押し寄せる夢を見る、脇屋左衛門義助に首を取られそうになる。次の日も同じ刻限になると大軍が攻め寄る夢を見、「よくも新田義貞公の兜に花を活けたな」と首を斬られそうになる。慌てた新助は又右衛門に相談する。鑑定家に見せ、間違いなく新田義貞の兜の八幡座であることが分かる。兜の鉢は越前家に献上され、殿の松平光通も大いに喜ぶ。今も土地の人々は、新田義貞の兜の鉢が出た場所に立派な石碑を建て祀っているという。





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