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『亀甲縞大売り出し』あらすじ

(きっこうじまおおうりだし)




【解説】
 武士が商売に手を出してもうまくいかなかったパターンが多いと聞くが、これは見事成功する話。
 伊賀・伊勢を領する藤堂家では主産物である綿が大変な不作であり、家の財政がひっ迫している。これをなんとか立て直そうと、杉立治兵衛(すぎたてじへい)が出した案は、綿を織物にして売り出したらどうかというものであった。出来上がった亀甲縞の織物を大坂の問屋に持っていくが、思ったような値で売れない。治兵衛はふと立ち寄った芝居小屋で、この亀甲縞を宣伝する手法を思いつく…。

【あらすじ】
 伊賀上野、伊勢津両城の城主となった藤堂高虎から五代、藤堂高敏(たかとし)の御代のある年のこと、花見の席で酒に酔って暴れ狂う1人の侍がおり他の者たちはどうにも手が付けられない。ここへ1人の足軽が天秤棒を持って参上し、この酔った侍を討ち倒してしまう。この足軽は杉立治兵衛(すぎたてじへい)といい、その腕を買われ正式に士分に取り立てられることになった。
 ある年、藤堂家唯一の産物である綿が大変な不作であった。高敏は家来一同を集め、家の財政を立て直す良い策は何かないか、身分の上下関係なく意見を募る。ここで杉立は、綿ではなく織物として売り出したらどうかと提案する。杉立の案は採用され、大規模な機織り場が造られ、女子供を雇い入れ織物30万反が織り上げられた。これらは亀甲縞(きっこうじま)と名付けられる。
 さて、この織物をまずは江戸で売り出すか大坂で売り出すか、杉立は思案するがやはり商いの街であるからと大坂から売ることにする。同僚の野口太兵衛とこれをいくらで売るべきか考える。品としては1反15匁以上で売って遜色のない物である。まずは野口が大坂・心斎橋の袴屋九衛門の店へと出向いて1反を12匁5分で買ってくれるよう求めるが、番頭は7匁5分でしか買い取れないと言う。藤堂家へ帰ってこのことを報告すると、杉立は家から200両という金を貰って、今度は自ら先の心斎橋の店を訪問する。良い品なのになぜ7匁5分でしか買ってもらえないのか尋ねると、店の者から品がいくらで売れるかは買い手がどのくらいいるかで決まるものだと教えられる。
 さて30万反という織物をどうしよう。杉立は考えながらフラっと立ち寄った茶屋で、二代目市川団十郎の明日からの芝居が町では評判になっていることを知らされる。何を思ったか、杉立は成田屋・二代目団十郎の元を訪れる。成田屋に事情を話すと、芝居の中で客に亀甲縞の織物を買い求めるよう告げてくれると言う。次に杉立は料理屋の芸子たちに頼んで、明日は亀甲縞で仕立てた着物を着て、お揃いで成田屋の芝居を見物してもらうようにする。
 さて翌日の芝居は大入り満員である。早速、変わった柄の揃いの着物を着た芸子たちが最前列に座っているので、客席の間では話題となる。そして舞台に上がった成田屋が芝居の途中でパラリと上衣を脱ぐと、その下に身に着けてるのは芸子たちと同じ着物であり、客席一同驚きの声を上げる。客席が静まると、成田屋はこの亀甲縞を是非買い求めて下さいと宣伝の文句を述べる。芝居が終わってどこであの亀甲縞を買えるのかと騒ぎになり、心斎橋・袴屋九衛門の店へと人々が押し寄せる。驚いた店の番頭はすぐに杉立の元に駕籠を飛ばし、亀甲縞5万反を注文するが、杉立は1反18匁5分でないと売れないと言う。さらに追加で5万反の依頼があると今度は1反24匁5分で売る。さらには残りの20万反は25匁4分で売れた。こうして莫大な利益を得、藤堂家の財政は危急を逃れた。杉立は3500石取りとなり、その後、家老にまで昇りつめたという。





参考口演:一龍齋貞心

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