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『祐天吉松〜飛鳥山 親子の出会い』あらすじ

(ゆうてんきちまつ〜あすかやま おやこのであい)



【解説】
 『飛鳥山親子の出逢い』は連続の世話物『祐天吉松』の一部で、この部分だけ独立して掛かることも多い。浪曲でもお馴染みの話である。
 吉松は、女房のお源に勧められ、王子の飛鳥山へ花見に出かける。飛鳥山では一人の子が大勢の子供に取り囲まれ殴る蹴るのいじめを受けている。事情を聴くとこの子は今日初めてかわらけを売りに来たが、仲間に出す金や付け届けを払っていないという。吉松は代わって金を支払ってやり、この子とともに茶屋に入る。話を聞くとこの子こそ、三年前に別れたきりになっていた我が息子、七松であることが分かる…。

【あらすじ】
 祐天上人累解脱(かさねげだつ)の彫り物を背中一面にしていることから、人呼んで祐天吉松という男。元は両国界隈の巾着切りであったが、縁あって加賀屋七兵衛の娘、おぬいと夫婦になり七松という子にも恵まれる。そんな吉松を、かつての巾着切りの仲間だった旗本崩れの立花金五郎がゆすりに来る。吉松と金五郎は御茶ノ水の土手で決闘をするが吉松は敗れる。あわやの所で一命を取り留めた吉松は、これ以上店には迷惑は掛けられないと加賀屋を離れた。水戸の剣術指南番、四宮隼人先生のところで3年の間みっちり修行を積み、免許皆伝の腕になる。しかしその間に、立花金五郎は加賀屋に火を付けて店の者を皆殺しにしてしまう。女房のおぬいと息子の七松も行方不明だという。
(以上、ここまでの話)
 その後、本所・中之郷の人入れ元締め、三河屋万蔵に見込まれた吉松は彼の養子になり、さらにお源という二度目の女房を迎える。お源の背中一面にオロチの彫り物がある。お源にとって吉松は父親の仇を討つ際助けてくれた恩ある男である。
 ある春の日、吉松はお源に勧められて一人で花見に出かける。男は外で何があるか分からないからと、お源は十両の金を持たせてくれた。来たのは王子の飛鳥山である。見ると一人のかわらけ売りの子供が十数人の小僧から殴る蹴るといじめられている。事情を聴くと、この子は今日初めてかわらけ売りに来たが、山番への付け届けや仲間金を払っていないという。吉松はこの金を代わりに払う。
 いつまでも泣いているこの子を慰めようと、2人花見茶屋へ入る。子供は目の前に積まれたゆで卵をひとつ袂(たもと)にそっと入れる。その卑しさに怒る吉松だが、子供は家にいる病身の母親に食べさせようと思ったと言う。
 吉松が身の上を詳しく聞くと、その母親とは自分のかつての女房であるおぬい、この子供は三歳の時に別れた我が子、七松であることが分かる。かつては本郷二丁目の加賀屋という裕福な商家であったが、家は放火されておぬいと七松以外は皆殺しになった。父親である吉松とは生き別れになり、家族も財産も何もかも失った母子は、今は下谷坂本で貧しく暮らしているという。吉松はゆで卵十個と十両を母親に渡すようにと託す。吉松は自身を「畳屋の松吉」と名乗る。2人は一緒に坂本の母子が暮らす家のすぐ傍まで来たところで、おぬいと顔を合わせてはまずいと吉松は去るのであった。




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