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『追分供養』あらすじ

(おいわけくよう)



【解説】
 中山道を行き来する馬子で追分節の名人である源蔵は、妹のおさくとと2人暮らしである。ある日、若い侍を馬に乗せる。侍はこの馬子が追分節の名人だと分かると、是非唄って欲しいと乞う。いったんは断った源蔵だが侍にどうしても唄って欲しいと懇願され、唄うことにする。追分節の唄のなかには、松本の城主を馬鹿にする部分があった。松本藩の侍であった侍は怒って、源蔵を斬り捨ててしまう…。

【あらすじ】
 中山道の追分宿に住む源蔵は、街道最大の難所、碓氷峠を行き来する馬子で、追分節の名人である。源蔵には両親が無く、13歳の妹、おさくとの2人暮らしである。ある年の8月15日で今日はお月見の日。今日は早く帰ると妹に言い残し、源蔵は仕事に出る。仕事を終え、追分宿まで帰ろうという時に一人の若侍に坂本宿まで行ってくれと頼まれる。断ろうとした源蔵だが、結局峠の茶屋までならと、侍を馬に乗せ、自らは綱を取る。
 侍は馬子の名を聞くと、唄の名人として名高い源蔵だと分かる。是非唄を聞かせて欲しいと言う侍。しかし追分節には大名の悪口を言っている箇所があるのでと源蔵は断る。侍はどうしてもと懇願し、源蔵は唄う。唄の中には「松本丹波のしみったれ」という台詞があった。侍は進藤半之丞という松本藩の侍であった。殿様を侮辱されたと激怒し源蔵を背中から斬りつけてしまう。
 いつまで経っても兄が戻ってこないと、おさくは峠の街道を探す。ガサガサという音がするので行ってみると愛馬がいる。馬に袖を引っ張られるままに行くと、着いた先には息も絶え絶えの兄、源蔵が倒れていた。「進藤半之丞」と自分を斬った者の名前を言うと源蔵は絶命した。
 おさくは兄の跡を継いで馬子になるが、武士は絶対に馬には乗せない。馬子をしながら茶屋を訪ねてまわり兄の仇の行方を捜していた。
 3年後の8月15日、兄の命日の日。年は30歳くらいの盲人の侍が馬に乗せて欲しいと言う。侍には藤八というお付きの者がいる。侍は乗せまいと誓っていたおさくだが、目の不自由な侍を気の毒に思い、馬に乗せた。侍は「其方は源蔵という者を知っているか?」と尋ねる。馬は急に止まった。彼こそは進藤半之丞である。おさくは懐から小刀を出し斬りつけようとする。半之丞は今までの事をおさくに語る。半之丞は源蔵を斬った後、江戸で盲目になってしまったが、人の心の優しさを知るようになる。今日、こうして碓氷峠を越えるが、もしあの時の源蔵が生きていたなら許しを請いたい。源蔵が死んでしまっていたのなら身内の者に仇を討ってもらい私は死んでしまいたい、こう言う。目に涙を浮かべるおさく。兄の仇と憎んでいたが心根の良いお侍様であった。「あなたを許します」とおさくは言う。おさくと半之丞は源蔵の墓を訪ねる。半之丞は墓の前に手を着いて何度も何度も許しを請うのであった。





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